キャサリン・マッキノン、一九九一年の座談会でクラレンス・トーマス最高裁判事を支持する発言

本家ブログでフェミニスト法学者キャサリン・マッキノンの名前が出ているので、それに関連したおまけをこちらに。
ハードドライブの中の古いファイルを整理していて、一九九一年にブッシュ(父)大統領によって最高裁判事に指名された(が、まだ承認されていない時期の)クラレンス・トーマスについての座談会記事を発見。著名なフェミニスト法学者だから呼ばれても別に驚くようなことじゃないけど、キャサリン・マッキノンが座談会に参加していた。掲載誌は、以前わたしがウガンダ「反同性愛法」についての記事を寄稿したこともあるTikkunの一九九一年九月号(目次)。この座談会で、キャサリン・マッキノンは現在の最高裁で一・二を争う超保守派のトーマスについて、次のように発言している。

保守派はたとえばポルノグラフィが引き起こすような、ほんとうの害悪について語ろうとしている。リベラルはその害悪を矮小化し、ポルノ製作者の「表現の自由」として擁護している。女性の経験からは、右翼的な「法と秩序」という路線のほうが、少なくとも女性に対する性暴力の現実を踏まえているという点で、納得がいく。わたしは法律家として、トーマス判事の法廷で議論をしなければいけないかもしれないことに、まったく脅威を感じていない。かれは話がわかる人だと思う。一部の女性団体は、かれの妊娠中絶についての考えを理由として、それほどたいした根拠もなくはじめからトーマスを非難しようとしているが、わたしはそれには反対だ。

その後トーマス判事はセクハラ疑惑で追求を受けながらも上院によって承認され、最高裁判事になったが、それ以来のかれはフェミニストにとってとても「話がわかる」相手ではない。アントニン・スカリア判事とならんで、四人いる保守系判事のなかでもとくに急進的な保守としてことあるごとにフェミニストの怒りを買うような行動を取っているだけでなく、最近では、保守政治活動家から高額のプレゼントを受け取ったり、家族がはじめた政治団体に多額の寄付をしてもらったりしていることも明らかになっている。反「ポルノ・売買春」の価値観を共有しているという一点だけで、こういう極右的な人たちとつるむのはホントどうにかしてほしい。(でも、こういう発言をあんまり紹介したら、保守的な人からは逆に「マッキノンって偉いじゃん!」って反応がありそう。)

性暴力被害者を「無条件で保護する」文化は成立しているか

メールマガジンJapan Mail Mediaのサイトに、バックナンバーとして冷泉彰彦さんの記事「CBS女性記者襲撃事件とアメリカ的フェニミズム」が掲載されている。サイトに掲載されたのは先週だが、わたしはこの記事が某秘密主義MLで紹介された時に読んでおり、それに対してML内でコメントを書いていたのだが、JMMのサイトにも掲載されたのでわたしのコメントを以下に転載する。

まず二番目の問題ですが、まずこの異常なニュースが報道された背景にあるのは、性的暴力の被害者は徹底的に救済・保護するという文化が確立しているということが挙げられます。(中略)この時期からは女性をほぼ無条件で保護する権利が確定しています。判例というだけでなく、社会的な価値観としても明らかです。

そんな文化が確立していれば良いのですが、それはないでしょう。ローガンさんは、そういう文化を確立するのに貢献するため、問題提起するために、あえて普通なら公開されない被害の事実を勇気を出して公開したのであって、すでにそういう文化が確立しているからと気軽に公表したわけではありません。
そもそも、この件がそれだけ話題になり、ローガンさんの勇気がたたえられている(そして、ローガンさんに対する中傷発言が激しく反発をされている)ということが、ローガンさんの行為が「社会的な価値観」を揺るがすものであることを示しています。たとえば男性ニュースアンカーのアンダーソン・クーパーが暴行を受けた件については、勇気を出して公表したと褒める人もいなければ、かれに対して失礼なジョークを言うのもタブーではありません。
筆者は、

勿論、実名での告白を自動的に強制するとか、実名を晒すということは今でも厳格に否定されていますが、本人の自由意志で過去の被害経験を告白することがメンタルな問題解決に役立つのであれば、周囲はそれを受容しなくてはならないし、まして嘲笑したり、疎遠な感じを持ったりすることは近親者であっても厳しく禁じられる、そんな文化が確立しているのです。

と書いていますが、それが「厳しく禁じられる」のは、性暴力被害を公言することが、いまだにタブーだからです。もしほかの犯罪被害と同じように、被害者の「落ち度」が責められるのでもなく、被害者の恥だとか貞操の問題だとかして扱われるのでなければ、ほかの犯罪被害者と同じ程度には(アンダーソン・クーパーに対して「話題作りになって良かったな」と揶揄する人がいて、それが悪趣味だと思われつつも特に反発を浴びない程度には)許容されるはずです。そうでないのは、いまだに性暴力に関して、ほかの暴力や犯罪行為とは別格の、なにか被害者本人の資質や人格にとって汚点となるようなものだとして見る「社会的価値観」が温存されているからです。
すなわち、性暴力の被害者を嘲笑することがことさら咎められるのは、性暴力は特殊な犯罪だという価値観と裏表です。もちろんいまの社会において性暴力が特殊な犯罪として扱われているのは事実なので、ことさら咎める(そうしたものからことさら被害者を保護しようとする)のは悪いことではないでしょう。しかしそれは、被害者保護が社会的価値観として定着しているからではなく、逆にそうした価値観が不十分だからこそ、要請されるものです。もしほんとうに性暴力被害の告発がタブーではない世の中になったならば、クーパーの被害の扱いとローガンさんの被害の扱いは、「程度の違い」程度の問題に落ち着くのではないでしょうか。

性的暴行を確実に予防する工夫――効果は保証します!

英語圏ブロゴスフィアで一年とちょっと前くらいに流行った(ていうか紹介されまくった)記事なんだけれど、日本語圏で紹介している人がいないみたいなので紹介。既に紹介されてたらごめん。ソースはNo, Not You。うまい訳をつける自信ないから、文句があったら原文をどうぞ。

*****

Sexual Assault Prevention Tips Guaranteed to Work!
性的暴行を確実に予防する工夫――効果は保証します!


1. Don't put drugs in people's drinks in order to control their behavior.
誰かの行動を支配するために、ほかの人の飲み物に薬を入れるのはやめましょう。


2. When you see someone walking by themselves, leave them alone!
一人で歩いている人を見かけたら、放っておきましょう。


3. If you pull over to help someone with car problems, remember not to assault them!
車が故障して困っている人を助けるときは、暴行しないよう気をつけましょう!


4. NEVER open an unlocked door or window uninvited.
鍵がかかっていないドアや窓を勝手に開けないように。


5. If you are in an elevator and someone else gets in, DON'T ASSAULT THEM!
エレベーターに一人で乗っている時にほかの人が入ってきても、暴行しないように!


6. Remember, people go to laundry to do their laundry, do not attempt to molest someone who is alone in a laundry room.
コインランドリーは洗濯をするところです。一人でコインランドリーにいる人を襲うのはやめましょう。


7. USE THE BUDDY SYSTEM! If you are not able to stop yourself from assaulting people, ask a friend to stay with you while you are in public.
連れの人と一緒に! 一人では暴行を思い止まれないなら、公の場にいるあいだ一緒にいるように友人に頼みましょう。


8. Always be honest with people! Don't pretend to be a caring friend in order to gain the trust of someone you want to assault. Consider telling them you plan to assault them. If you don't communicate your intentions, the other person may take that as a sign that you do not plan to rape them.
常に正直に! 暴行する機会を得るために相手の信用を得ようとして優しい友人の振りはしないように。はっきり「あなたを暴行したいです」と伝えましょう。意思をきちんと伝えなければ、相手はレイプする意図はあなたにはないと誤解するかもしれません。


9. Don't forget: you can't have sex with someone unless they are awake!
起きている人としかセックスできないということをお忘れなく!


10. Carry a whistle! If you are worried you might assault someone "on accident" you can hand it to the person you are with, so they can blow it if you do.
笛を持ち歩きましょう! 意図せず暴行してしまうかもしれないと不安だったら、あなたが暴行しようとしたときに吹けるように、あなたと一緒にいる人に笛を渡しておきましょう。


And, ALWAYS REMEMBER: if you didn't ask permission and then respect the answer the first time, you are committing a crime--no matter how "into it" others appear to be.
もしあなたが(性行為の)許可を得ようとせずに、また相手の答えをを最初から尊重しない場合、どれだけ相手が「望んでいる」ように見えても、あなたは犯罪をおかしているということを一時も忘れずに。

*****

これ、とくに解説しないよ? ツイートとかブクマとかみて必要そうならするけど、必要ないよね?

【追記】

はやくも考えを改めました。ていうか、ツイッターで指摘を受けたのだけれど、文化的な違いがあるので解説しないと通じないかもしれないと。

えっと、解説すると、このリストで挙げられているのは、全部「性暴力の被害を避けるために、女性はこのように行動すべきだ」そして「そんな行動を取ったから被害はあなたの自業自得だ」というような、女性に投げかけられる性暴力言説をひっくり返したものです。たとえば8番なら、「曖昧な態度をとって相手をその気にさせるから襲われるんだ、もっとはっきり意図を伝えなければいけない」みたいな。

もちろん、曖昧な態度で相手をその気にさせてあとでがっかりさせるのは、かわいそうだし気を付けようね、ということなら、分からないでもないよ。でも「性暴力の被害を避けるために」気を付けなくちゃいけないというのは、なにか違う。人間関係でいろいろ気をつけるべきことはあると思うけど、それと性暴力が結び付けられて語られたり、被害者のほうに落ち度があるかのように言われるのは、ひどいと思う。

とにかく、このリストは実際に加害者になりかねない人に対するアドバイスを行っているわけではなくて、「被害を避けるために」という口実のもと、女性の行動をあれこれ制限したり、被害者に性暴力の責任をかぶせたりするような「よくある性暴力予防のアドバイス」を告発するために書かれたもの。

個別の項目に関しては、日本でよく言われることと違っているかもしれないけれども、こうした「アドバイス」が女性に押し付けられているという点は同じだと思う。日本のみなさん、これを参考に日本版をつくりませんか?

cf. 「異性愛者への12の質問」についての女性学MLでの議論

女性とマイノリティと労働者を支援するブラック企業?(4)

前エントリで上野千鶴子さんへの返答その1とその2を掲載したけれども、そのあいだにあったのが、以下のポスト。上野さんが「憶測ばかりだ」と言うから、だったら具体的な話を出そうと元スタッフの体験談を出したら、上野さんはさらに怒ってしまったという結果に。元スタッフの方の承諾も得たので、固有名詞を伏せたうえで、以下に掲載します。文中Aさん、Bさんとなっているのは、雇用者側の二人。
 ちなみに、この体験談をシェアしてくれた元スタッフの方は、ML上で自身の体験について発言された方とも、山口智美さんが言及されている山口さんの友人とも、また別の方です。ここに書かれているようなことは、一人や二人の元スタッフが言っていることではないということ。


こんにちは、みなさま。

おまえの話は憶測ばかりでけしからん、という声もありましたので(てかー、わたしは気を使ってわざとはっきり書かないでおいただけなんですけどー)、********/****総合法律事務所の元スタッフだった方に、匿名で投稿するという条件で、****勤務の経験について具体的に書いてもらいました。

ただし、雇用者側のAさんやBさんを個人として貶めることが目的ではないので、個人的な印象や性格にまつわるエピソードなどは、その元スタッフの了承を得た上で、わたしの判断で省きました。

わたし自身、Aさんのことは十年以上前から存じており、他人にも厳しいが自分にまず一番厳しい、正義感のとても強い方だと思っていたので、元スタッフの体験談を聞いて驚きの連続ですし、ここまでのやりとりで何の反応もないということに、やや失望しています。

以下は、いただいた体験談(箇条書き)です。また、わたしが出した11項目の質問にも答えていただいたので、その回答も掲載します。

<元スタッフの体験談>

・勤務時間は10時〜19時だが、定時にあがったためしはない。「今日は予定があるので定時であがりたい」と伝えると、「私たちはこんなに忙しいのになぜスタッフが早くあがれるのか!」と言われた。「今日中に仕上げなければならない仕事」が毎日多すぎる。雇用者は事務所から歩いて帰宅できるので下手すれば徹夜仕事になりそうだが、さいわい事務所の入っているビル自体が0時で閉まるのでそうならずに済んでいる。それでもスタッフが終電で帰るのはほぼ当たり前状態。電車がなくなったら雇用者宅へ泊まればいいというが冗談じゃない。

・たびたびBさんより手製の弁当を売りつけられる。200円〜300円程度だが、おかげで昼休みも事務所から離れられない。

・給与明細には合計の振込給与額のみが記載され、基本給、残業手当ほか諸手当、保険などの天引き額は一切記載されていなかった。これではまったく明細ではない。というか採用面接の際にも、残業規定や諸手当、保険などの説明が一切なかった。

・とにかく仕事かかえすぎ。法律事務だけならまだしも、活動系のお金にならない仕事がハードすぎ。国際会議にかけるための資料づくりやリサーチ、翻訳出版、海外ゲストのアテンド、****主催イベントの準備と運営などなど。

・法律事務所の仕事はクライアントの人生を左右するものなので、わずかなミスも許されないのは当然だが、雇用者でありながらスタッフのミスに対して被害者的立場から責め立てる。いくら人手が足りないとはいえ、そもそもそんな重要な仕事を入りたての不慣れなスタッフに任せること自体が間違い。致命的ミスが起こる原因をつくっているのは雇用者側なのに、ミスするのはスタッフ個人の力量/能力の問題としてシステムの改善を行わないから人員流出を避けられない。

・聞いた話だが、数年ほど勤めた優秀なスタッフがおり、何度か昇給して雇用者の信頼を充分に得ていたものとみられていたが、あるとき仕事上のトラブルが起こったところ、雇用者ふたりはそのスタッフを猛烈に責め立て、耐えきれなくなったスタッフが結局仕事を辞めることになったという。スタッフとの信頼関係つくれなさすぎ。双方とも不幸。

・スタッフの仕事の範囲が不明瞭すぎる。明らかに業務とは異なる、雇用者のプライベートな用事まで発注する。しかし、プライベートな用事を頼むときや機嫌のいいときは友だち同士みたいな親しげなアプローチをとってくるので始末が悪い。(Aさんは*****の資格も持っており、定期的に講習DVDが送られてきて、講義のなかに出てくるキーワードを書き留めて先方に送らなければ履修を認められないのですが、その作業をスタッフに振ります。アクセサリーの修理手配やクリーニングに出した洋服の引き取りをさせられたひともいます。)

・事務所内のトラブルに関してはつねにAさんが被害者でBさんは支援者のスタンス、スタッフは加害者扱いである。Aさんは遠くから激しい口調でスタッフをののしり(決して顔は合わせない)、BさんはAさんの味方であることをアピールしつつ、Aさんの言い分や思いをスタッフに伝える役割を担っている。

<11項目の質問と回答>

1)募集広告では常勤スタッフを募集とされていますが、実際の労働時間は一日あるいは週どれくらいでしたか?

1日につき10〜13時間。終業定時は19時ですが、実際は21時にあがれればマシなほう。

2)法定労働時間(一日八時間、週四十時間)を超える労働はありましたか?

ありました。

3)法定労働時間を超える労働について、勤務規定に明記されていましたか? 残業手当の割り増しはもらえましたか?

勤務規定を見たことがありません。給与明細の支払い総額は基本給プラスαでしたが、αの内訳は不明(明細に記載なし)。

4)勤務中に、昼休みなど職場から完全に自由に行動できる休憩時間はどれだけ与えられていましたか?

名目上は1時間。しかし、雇用者ふたりがご飯も食べずに仕事をしているのを見ると、スタッフだけ休憩をとるわけにはいかないという空気を感じると思います。

5)厚生年金、健康保険には加入できましたか?

いいえ。

6)雇用保険には加入できましたか?

いいえ。

7)労災保険には加入できましたか?

いいえ。

8)年次有給休暇はありましたか? 実際に有給休暇を取得・行使できましたか?

いいえ。

9)産休の制度はありましたか? 実際に休暇を取ることができましたか?

わかりません。

10)育児・介護休暇の制度はありましたか? 実際に休暇を取ることができましたか?

わかりません。

11)****サイトの求人広告では「自営業的に仕事ができる方」が募集されていますが、自営業的な仕事とはどういう意味か分かりますか?

意味がわかりません。自営業的に仕事ができるならだれかに雇われる必要はないと思います。

<以上>

女性とマイノリティと労働者を支援するブラック企業?(3)

ここのところ取り上げているフェミ系ブラック企業について、某秘密主義ML上で質問をしていたら、上野千鶴子せんせーが「憶測にもとづいている」「答える必要はない」「この件はこれで収束してください」と言ってきた。
 おねがいであって禁止ではないとわざわざ言っているけれども、フェミ業界において上野さんほど影響力がある人が「おねがいもうしあげます」とまで言えば、普通はみんな黙ってしまうもの。わたしや山口智美さんみたいに日本のフェミ業界の人間関係に縛られない海外組を除いてはね。
 権力者だし、上野さんの個人情報が含まれているわけでもないし、上野さん自身が私的領域に隠れて家父長が暴力をふるうことを批判して公的領域の拡張を主張しているわけだから、ほかの参加者と区別して、上野さんの名前だけは伏せずにブログに書きます。
 あと、上からもリンクしたけれども、山口さんによる上野さんへの返答も参照。
 以下、上野さんに対して書いた返事×2。


上野さま、

あれが憶測によるものだと思ったとしたら、上野さんって案外文章を読む能力がないですね。
いくらわたしでも、憶測であそこまで書くことはありません。

****はMLに参加者に対して「ご友人・知人で適任の方がおいででしたら、ご紹介ください」と要請しているわけですから、労働条件や労働環境についての質問にそれなりに答える責任はあるでしょう。疑問を持ったまま友人・知人を紹介するなんて、無責任なことはできないじゃないですか。

上野さんは、昨年WAN(ウィメンズアクションネットワーク)の理事として、雇用者側として労働争議に関わり、女性運動内部における労働問題の難しさについていろいろ考えるところがあったのではないかと思いますが、こういう要請をするところをみると、いまもまだ雇用者側の立場に立って、労働者の権利についての主張をやめさせようとしているように見えます。上野さんのように影響力のある方が、労働者(それも主に女性や性的少数者の労働者)の権利を擁護するのではなく、逆にかれらの権利主張を押しとどめるような立場で関与してくるというのは、とても残念です。

*****

上野さま、

あいまいにぼかして書くと「憶測に過ぎない、予断と偏見が増幅される」と言われ、だったらと具体的な証言を提示すると「当事者のみしか知りえないような情報は書くな」とくる。なんだかんだいって結局、労働者の権利なんて主張するな、黙っていろ、と言いたいだけなのでしょうね。

当事者同士で解決できればそれが最善でしょうが、現実にそう簡単にいかないからこそ、労働組合があり、差別やセクハラの問題に取り組むフェミニストたちの運動があったりするのではないですか。そういうのを排除して当事者だけでなんとかしろということは、すなわち立場の弱い労働者たちに泣き寝入りを強いることと同じです。

もしかりに数次にわたって人事募集をしただけで、元スタッフの方たちが言われているような問題がまったくなかったのであれば、わたしもあんな質問をしようとは思わなかったでしょうし、ああいう質問を受けてもなんら萎縮する必要はないはずです。もし萎縮するのだとしたら、それは元スタッフの方たちが言われているような問題が、事実に基づいているからでしょう。

ML参加者を食い物にするような、問題のある企業や事業の人事募集が萎縮するのは、良いことだと思います。できれば、人事募集だけでなくそういう企業体質・雇用慣行自体を萎縮させて、労働環境を改善させたいですね。

問題は、わたし個人が納得するかどうかではなく、女性とマイノリティの人権を掲げた活動をしている団体が、自分たちの事務所で働く(主に)女性とマイノリティの従業員たちを適切に扱っているかどうか、でしょう? わたしのやり方に賛同できないというならそれでも構いませんが、上野さんがどうして働く女性やマイノリティの権利や立場にこれほどまで冷酷かつ無関心でいられるのか、とても不思議に感じます。

女性とマイノリティと労働者を支援するブラック企業?(2)

読んでいない方は、パート1から読んでください。
一週間待つ予定だったのだけれど、元スタッフの方がパワハラで苦しんだ経験をMLに投稿したので、予定をくりあげて(といっても一日早くなっただけだけど)出した。その人は、すぐにでも反応が見たいのではないかと思ったので。
しかし、このMLにはふだん労働法とか労働者の権利にうるさい常連参加者もいるのに、そしてその人は別の話題では投稿をしているのに、この話題には全然食いついて来ないのが不思議。わたしはまったく労働法とか詳しくないので、助けてくれたらいいのに。


こんにちは、みなさま。コヤマエミです。

**さん、貴重な体験談をありがとうございます。このMLにはほかにも********/****総合法律事務所で働いていた経験のある方が何人も参加していると思いますが、**さんのお話は、わたしがほかの方から聞いた話と多くの共通点があります。

****の運営者自身が、スタッフに期待する以上に、みずから激しい仕事量をこなしていることは、疑いようがありません。多くの運動体は、中心にいるそうした少数の人たちの情熱によって成り立っている、という側面があるのも事実でしょう。わたし自身、そのように自分を酷使するように社会運動にのめり込んだことが何度もあります。

しかし、自分が食事や睡眠を取るのも忘れるくらい活動に没頭しているからといって、従業員として雇ったスタッフに同じことを期待することはできません。かりに口先でそう指示していなくても、そのように振る舞わなければいけないと従業員に思わせるような環境を作り出してしまえば、それはパワーハラスメントと呼ばざるを得ないでしょう。そして、そうした状況のために、せっかく雇ったスタッフが次々と辞めていく、あるいは勤務継続が困難なほど精神的に追い詰められてしまうのであれば、何らかの改善措置を取るのが雇用者の責任ではないでしょうか。

ほんとうは、これは##さんに質問したかったのですが、前回の質問もまだお応えいただけないようなので、**さんやその他の元スタッフの方にぜひ教えてほしいことがあります。それは、****における労働条件の実態についてです。

1)募集広告では常勤スタッフを募集とされていますが、実際の労働時間は一日あるいは週どれくらいでしたか?
2)法定労働時間(一日八時間、週四十時間)を超える労働はありましたか?
3)法定労働時間を超える労働について、勤務規定に明記されていましたか? 残業手当の割り増しはもらえましたか?
4)勤務中に、昼休みなど職場から完全に自由に行動できる休憩時間はどれだけ与えられていましたか?
5)厚生年金、健康保険には加入できましたか?
6)雇用保険には加入できましたか?
7)労災保険には加入できましたか?
8)年次有給休暇はありましたか? 実際に有給休暇を取得・行使できましたか?
9)産休の制度はありましたか? 実際に休暇を取ることができましたか?
10)育児・介護休暇の制度はありましたか? 実際に休暇を取ることができましたか?
11)****サイトの求人広告では「自営業的に仕事ができる方」が募集されていますが、自営業的な仕事とはどういう意味か分かりますか?

これらは具体的な労働条件の話ですが、**さんがパワーハラスメントについて言及されており、##さんの前にいると精神的に辛い、恐怖を感じる、ということを書かれています。もし従業員の人たちがそのような経験をしているとすれば、女性とマイノリティの権利のために戦っている団体としては非常に問題ありということになると思います。(いや、そういう団体でなかったとしても非常に問題ではありますが。)

パワハラといえば、部下を怒鳴る、嫌がらせする、というのが典型的だと思われがちですが、もちろんそれだけではありません。部下に対して、勤務時間や能力や集中力などの点で非現実的な期待を抱くことは、期待された働きができない従業員の精神と自尊心を蝕むという意味で、パワハラ行為だと言えます。

また、**さんがご自身のことを括弧付きで「ミスの多い仕事の遅い」「少し頭の弱い」と卑下して書いているのにも気になります。こうした表現を##さんが彼女に向かって直接使ったのかどうかは分かりませんが、劣悪な環境で働いた結果として、自分のことをそのような能力の低い人間であると思い込まされてしまうというのは、パワハラを経験した人によく見られるパターンです。

ご多忙だとは思いますけれど、##さんやその他の****の責任者の方からも、****における労働環境と、あまりに頻繁な募集について、よろしければ是非コメントをお聞かせください。

女性とマイノリティと労働者を支援するブラック企業?

 某秘密主義メーリングリストに出したポスト。返事があるか、返事がないまま一週間が過ぎるまでは、とりあえず一部伏字。その後のことはその後考える。


 **さま、みなさま。

「**ー*****/********事務所」の「スタッフ急募」広告は以前からこの****で繰り返し流されていましたが、今年になってからさらに頻度が増えているように思います。わたしの手元に残っているだけでも、一月、六月、八月、そして今回と、四度にもわたってそれぞれ複数名の常勤スタッフが募集されています。

いまの経済状況において、まさかいくら募集をかけても求職者がまったく集まらないなんてことは、おそらくないでしょう。だとすると、どれだけスタッフを雇ってもリテンション(採用した人材を職にとどまらせること)に失敗しているのではないかと想像します。しかし繰り返すようですがいまの経済状況において、そんなにスタッフが次々に辞めていくということも、普通では考えにくいです。

そうすると最後に考えられるのは、スタッフが次々と辞めていくような理由が「**ー*****/********事務所」の側にある、ということです。これだけ頻繁に求人広告を見ていると、少なくともわたしはそういう印象を感じますし、どれだけ一般的か分かりませんがそれと整合的な伝聞もいくつか耳にしています。

気になるのは、六月の募集以来、新たに次の文面が追加されたことです。

体力と精神力に自身のある方
向上心のある方
明るく、テキパキ仕事のできる方を希望しています。

これを読むと、これまでのスタッフは体力と精神力がなかったり、向上心が足りなかったり、明るくテキパキ仕事ができなかったために、辞めていったのだ、と「**ー*****/********事務所」の側が認識しているのだと解釈できます。しかし辞めていったスタッフの側から見れば、体力や精神力をすり減らして働いたあげく、向上心を挫かれ、明るくテキパキ仕事をするような余裕も失っていったということかもしれません。

そこで質問ですが、「**ー*****/********事務所」では、この不景気の時代にスタッフ募集をこれほどまで頻繁に繰り返さなくてはいけなかった理由はなんだと認識していますか? よろしければ、過去三年間で採用(仮採用を含む)したスタッフの人数と、その平均勤務期間も教えてもらえないでしょうか。

女性やマイノリティのアドボカシーを業務として扱い、また新自由主義的な労働者の酷使や使い捨てにたびたび抵抗する活動をしている団体として、おそらく女性やマイノリティが多いスタッフが頻繁に辞めていくというのは気になりますし、いままさに職を探している知り合いを紹介していいものかどうか悩むところです。