『バックラッシュ!』は「世界日報=統一教会」をタブーとしているか

 「たんぽぽのなみだ〜運営日誌」で、たんぽぽさんが「壷のタブー?」と題した文章を書いている。

1月28日エントリで、すこしお話した、
バックラッシュ!』は、かくもすばらしいのですが、
この本(というか、小山エミ氏と、荻上チキ氏のふたり)について、
わたしは、以前から、気になっていることがあります。


それは、ふしぎなことに、この本のどこにも、
統一教会」「国際勝共連合」という語が、出てこないことです。
世界日報』は出てきますが、それがどこの機関紙かは触れないのです。
これは、かなり徹底していて、じつは本だけでなく、
もとになったウェブサイトでも、極力避けています。
どうやら、一定の方針があって、わざと触れないもののようです。


(略)


とはいえ、『世界日報』が、統一教会のメディアであることは、
まぎれもない事実ですし、彼らの純潔思想が、
バックラッシュに影響していることも、たしかでしょう。
ましてや、政権与党のバックラッシュを批判しながら、
その支持基盤である、国際勝共連合をまったく無視するのは、
政治批判としてふじゅうぶんだと思います。

 「この本のどこにも」統一教会国際勝共連合世界日報の関係が触れられていない、というのは事実として間違い。山口智美さんの論文においてバックラッシュ勢力の分析としてさんざん触れられている。以下は『バックラッシュ! なぜジェンダーフリーは叩かれたのか』より山口智美著「『ジェンダーフリー』論争とフェミニズムの失われた一〇年」からの引用。

 最近の「新しい歴史教科書をつくる会」の内紛劇でもあきらかになっているように、日本会議を中心とした現在の右派系運動における「宗教右翼」と呼ばれる勢力の影響力は、かなり大きい。よく名前があるところだけでも、神社本庁生長の家統一協会キリストの幕屋新生佛教教団、佛所御念会、霊友会などをはじめとするさまざまな右派系宗教団体、そしてモラロジー倫理研究所などの「倫理修養団体」と呼ばれる団体がかかわっている。 (p.264)

 二〇〇二年秋には、統一協会系新聞『世界日報』での「ジェンダー・フリー」関連報道が開始される。各地の条例審議の動きや国会での答弁、性教育などについての報道を通じて、同紙は積極的なバッシングを展開し、現在に至っている。また、統一協会の政治部門である国際勝共連合の二〇〇三年度の年表には、「ジェンダー・フリー対決の年」というタイトルがつけられるなど、統一協会フェミニズム攻撃はこれ以降、非常に活発になっていく。 (p.266)

 このように、はっきりと触れている。本全体として見れば、政治批判として十分なはず。


 ちなみに、何故わたしのサイトで世界日報の背景にあまり触れないかというと、わたしがやっているのはバックラッシュ勢力の組織分析ではなく、言説の検証だから。言説のレベルであれば、統一教会の主張であっても論理的に納得がいけば同意することはありえるし、偉いフェミニストの発言であっても根拠が薄弱だったり論理がおかしければ批判するのが当たり前。
 実際にバックラッシュを起こしている組織がどうなっているかということは、山口さんら他の論者の方が詳しく調べているので、わたしが書くまでもない。そもそも、わたしが書こうとしたところで、知識がないので大したものは書けないしね。とにかくわたし的には、「世界日報って統一教会なんだ、信用できねー」じゃなくて、「世界日報ってこんなに酷い捏造や歪曲をやっていたのか、信用できねー」と思って欲しいわけです。