追記:クリスティーナ・ホフ・ソマーズについて

 昨日の記事で、肝心なことを書き忘れていた。

これはmasckaさんがリベラルでしかも民主党支持者のホフ・ソマーズ女史のことを『保守派の哲学者』とか『極右と言ってもいいくらい超保守的な論客』などと書いているからで、ホフ・ソマーズ女史が極右にみえるということは自分が極左翼ですと白状しているようなものだからだ。
http://biglizards.net/strawberryblog/archives/2008/01/post_622.html

 ここでカカシさんはソマーズは「リベラルでしかも民主党支持者」だとと書いている。リベラルという言葉にはいろいろな意味があり、学問的には左翼よりむしろ保守の主張する「減税、小さな政府」の側をリベラルと呼ぶ伝統があるので、ある意味ソマーズが「リベラル」というのは間違っていない。民主党支持者であるというのも、民主党にも左翼的な意味でリベラルな人と保守的な人がいるのだから、別に不思議はない。
 ソマーズ本人が保守系論客であることは、まぁ彼女の書いたものを普通に読めば誰でも分かることなんだけど、客観的なデータとしては、彼女の研究に誰がお金を出しているかを見れば明白かな。保守系シンクタンクやメディアのお金の流れを調べている Media Transparency というサイトの情報によると、ソマーズの研究を一貫して支援しているのは、John M. Olin Foundation という保守系財団。ソマーズがフェミニズムに関する研究をはじめた1991年から本を書き上げる1993年まで毎年2万ドル(当時のレートが分からないので現在のレートで計算すると約220万円)、本が出版された翌年には「本の主張を広く伝えるため」」として3万5500ドル(390万円)が提供されている。
 その後彼女が大学を離れて保守系シンクタンクに地位を得るまでの二年間は「フェミニズムについての研究と執筆」のためにさらに増額して年間3万8000ドル(415万円)の資金提供があり、シンクタンクに入った年にも1万5000ドルが出されている。グラントたくさん取ってる研究者の人はこの程度の金額はたいしたことがないと思うかもしれないけど、ソマーズは哲学者だということを忘れないでね。哲学者でそんなに毎年グラントを取るのは結構大変じゃないかな。
 John M. Olin Foundation が彼女の他にどういう研究にお金を出しているのか細かく調べるのは難しい(資金提供された学者が誰なのかは分かっても、その学者の業績や政治思想についてわたしが全部知っているわけではないからね)ので、大学ではなくシンクタンクだけに限ってみてみると、上位から Heritage Foundation、American Enterprise Institute、Manhattan Institute、Hoover Institution、Federalist Society と名の知れた保守系シンクタンクが並んでいる。
 ソマーズは「Who Stole Feminism?」の中で、Ford Foundation をはじめとするリベラル系財団が過激なフェミニズムや女性学に資金提供している、と批判しているけれども、彼女自身も保守財団の支援なしではその本自体書けなかった(あるいは、書いたとしても影響力を持てなかった)というわけ。そもそも金額からして圧倒的に保守系財団の資金の方が多いんだしね。
 口先で自分はリベラルだと言ったり民主党の支持者だと言ったりすることは簡単にできるけれども、研究資金の流れを見ればソマーズが保守系メディア・シンクタンクのネットワークの一部であることは明白。彼女が保守に見えるのはそれが事実であるからで、そうではないと言う人がいたら、それはその人自身がよほどの右翼であることを白状しているようなもの。
 カカシさんのブログの過去エントリをざっと見ていると、もう FOX News を延々と見ているような感覚にさせられて唖然とするのだけれど、移民規制問題について書かれたエントリだけは、移民である彼女自身の立場から、合法・非合法を区別しない移民バッシングやその背景にある人種差別意識に敏感に反応していて(さらに、共和党移民問題で道を誤って民主党に政権を奪われることまで懸念していて)共感できた。あとはもうちょっと自分とは違う立場の人にも想像力を広げて欲しいのだけれど。
 ちなみに、わたしは1年以上前から「共和党はハカビーが本命」と言ってきたのだけれど、カカシさんはロムニーが好きっぽいので、どっちが勝つか楽しみ。ロムニーは(個人資産がすごいので)資金不足で撤退に追い込まれることがないというおそろしいアドバンテージがあるけどねぇ。民主党はわたしはダメもとでゴア/オバマを希望していたのだけれど、オバマ/ゴアでも悪くない!(けど、ゴアがまた副大統領引き受けるのはあり得ないなぁ…)