国籍法改正反対派が送った2000通のメール&FAXに怯えた政治家

 少し遅れて知ったのだけれど、国籍法改正に反対票を入れ、自分のブログでは「国籍法について」というエントリだけトラックバック欄を削除した(わたしは、かれがトラックバック欄を削除する前に批判エントリからトラックバックを送っていたのだけれど、慌ててトラックバック欄だけ消したためか、サイドバーの「最近のトラックバック」の欄にはわたしのトラックバックは残っているが、他の人がトラックバックを送ることはできない)、参議院議員川田龍平さんのパートナーで「ジャーナリスト」の堤未果さんが、11月30日付けの東京新聞に国籍法改正についてのコラムを掲載している。全体を読まないとそのばかばかしさが十分に分からないと思うので、以下に全文引用する。

「本音のコラム」 民主主義の宝 堤未果

 かつてケネディ大統領は米国民にこう語った。「国があなたに何をしてくれるかでなく、あなたが国のために何ができるか自問してほしい」
 六月の最高裁違憲判決を受け、衆院でわずか三時間の審議で可決された「国籍法改正法案」が参院で審議されている。
 日本人男性と外国人女性の間に生まれた子に対し、父親が認知さえすれば(DNA鑑定はなし)日本国籍取得を認めるという同法に、偽装認知など多くの危険性がある事に議員が気づき、見直しを要求したが同案は衆院を通過。その後、慎重審議を求める声が与野党で拡大し、参院では入管審査徹底という付帯決議をつける条件で採決を先送りしたのだ。ある自民党議員は最高裁判決が出たからと思考停止する政治家を批判。「怖いのは全会一致となったらおかしいと思っても声を上げられないその仕組みだ。」
 過去に権威が決定を下した時「しょうがない」と受け入れた為に道を誤ったと悔やむ声は歴史上少なくない。今回、議員たちを揺さぶり疑問を投げかけたのは国会事務所に殺到した国民からのファクスやEメールだった。政治は民が動かすのだ。
 主権者の権利を付与する「国籍」という重要事項が選挙で頭が一杯の政治家にずさんに扱われる。その立法構造に疑問を持ち、声を届け続ける国民の存在こそが民主主義国家の宝ではないか。

 ケネディの演説との関係が全然見えないし、「ある自民党議員」として引用されているのが、国会議員に対して一人何十・何百というFAXやメールを届けるよう呼びかけるなど、率先して国民を煽動している戸井田とおる衆議院議員のことだったり、あるいは最高裁が国家の人権侵害を指摘し違憲だと言っていることを、過去に国が道を誤る原因となった「権威」の決定であるかのようにすり替えたりと、突っ込みどころが多過ぎてもうどこから始めれば良いのか分からない。
 でも注目するべきは、「今回、議員たちを揺さぶり疑問を投げかけたのは国会事務所に殺到した国民からのファクスやEメールだった」という部分。要するに、「川田龍平ネットウヨの煽動によって大量に届けられたFAXやメールの山に恐れをなして迎合しました」と告白してるとしか思えない。
 ひとりの国会議員のもとにどれくらいのメールやFAXが届けられたのかというと、国会内での地位や委員会によっても差があるだろうけど、ある議員の関係者に教えてもらったところでは2000通近く。その3/4がFAXで、反対派の「まとめサイト」で「メールよりFAXの方が繰り返し読んでもらえる」みたいに書かれていたことと関係していそう。内容は丁寧なものもあれば脅しに近いようなものもあるけれど、ほとんどは「まとめサイト」にあるような非現実的なシナリオを鵜呑みにしたものだ。
 それだけのメールやFAXが10日間やそこらのあいだに届けられたことを考えれば、びびってしまう議員がいるのも仕方がないか。政治ではよく「1通の手紙が届けば、その背後には100人同じ考え方の人がいると思え」みたいに言うけれど、その計算だと2000通の反対派の手紙は20万人の反対派の存在を連想させるわけだし。
 ネットを介在した「ネット右翼」的なパニック煽動が政治家にまで影響を及ぼすという構図は、以前の「ジェンダーフリー」騒動でも見られたし、毎日新聞Waiwaiをめぐる騒動でもあったから、大きなものではこれが三度目になる。いい加減、保守でもリベラルでもとにかく「リアリティ・ベースのコミュニティ」は、それに対抗する手段を整備しなければいけない頃じゃないだろうか。