この論法では、そもそも社会が存在するのか分からなくなる気が。

 「ジェンダーは社会構築物ではないと証明するチャート」について追加情報。

   


 この図は Rosa Lee 著『Why Feminists Are Wrong: How Transsexuals Prove Gender Is Not a Social Construction』が出典。ちなみに自費出版。タイトルを訳すと「なぜフェミニストは間違っているのか/トランスセクシュアルジェンダーが社会構築であるという説を反証する」という意味で、著者はMTFトランスセクシュアルの人。
 著者には一度だけ会ったことがあるんだけど、普通にいい人だった。でも言ってる内容は支離滅裂で、ポスト構造主義量子力学脳科学によって反証される、というのがメインテーマ。トランスジェンダートランスセクシュアルについておかしなことを言う一部のフェミニストに怒るのは分かるし、ポスト構造主義を否定するのも別にそれはそれで構わないんだけど、そこで量子力学や脳医学を持ち出すから完璧にトンデモと化してしまう。
 上の図の論理は、muchonov さんが推測していたように、

1「社会的に構築されたジェンダーは、『ある/ない』のいずれかである」
2「社会成員が0人ないし1人なら社会的に構築されたジェンダーは存在しないのは自明である」
3「社会成員が60億(全地球人口)の社会には、社会的に構築されたジェンダーがあると社会構築主義者/フェミニストは仮定している」
4「1から、2と3の間には社会的に構築されたジェンダーが『ない→ある』に移行するような人口規模xがあるはずだ」
5「しかしそんな値xを社会構築主義者/フェミニストは明示できない」
6「存在すべきxが存在しないという矛盾は3の仮定がそもそも誤りだから生まれたものであり、1〜5より背理法的に『ジェンダーの社会的構築』なる主張は虚妄だと証明できた」

 ということだと思うのだけれど、ちょっと考えれば分かる通り、これは「ジェンダー」どころか人間の社会だとか文化とかいうものを跡形も無く全部まとめて否定できてしまう、すさまじい論理。
 しかし衝撃だったのは、そんな本にわたしの文章が引用・参照されている件。いや、その部分はたまたま普通だったんだけどさ。