「新しい無神論者」エントリのブクマコメントに一斉お応え

 本家ブログのエントリ「米国を席巻する『新しい無神論者』の非寛容と、ほんの少しの希望」がわたしの記事にしては珍しく大量にブックマークされている。過去もっともブックマークが多かったのが「娘に『セックスやめないと自殺する』と言われた母親」というくだらないネタだったことを考えれば良い傾向か。
 このエントリはもともと有料メールマガジンα-Synodos」の創刊第一号に掲載させてもらった記事の再掲なので、もし誰にも見向きもされないようなことがあれば、まだ評判が確立されていないメルマガ(および編集長の荻上チキさん)に迷惑をかけてしまうのではないかと心配していた。ブックマークの内容には賛否両論あるとはいえ、少なくともこれだけ関心を持ってもらえたということは、メルマガの宣伝にもなったのではないかと思う。
 前置きはともかく、以下はブックマークコメントに再コメント。

2008年04月25日 optical_frog atheism, Richard Dawkins, science ドーキンスら新しい無神論者にみられる非寛容・独善について:しかし,この話を「どっちもどっち」と読むとしたら,それは困りますね/再読.ミスリーディングな文章:非寛容は無神論者の一部/全体? 印象操作あり

 ミスリーディングだったと感じたとしたら、それはわたしの文章が下手なせいです、ごめんなさい。わたし自身が無神論者ですし、取り上げている団体の集会に常連として毎月楽しく参加していて(月例集会と読書会に参加しています)、全体を否定したつもりは全然ないんですが。

2008年04月25日 Midas これは無神論でなく「潜行型」の原理主義マドリッド爆弾テロ容疑者の一人は正にこのような人間だった。オウムや幸福の「科学」と一緒の進歩信仰。アラブ相手の戦争と経済崩壊は今後アメリカを原理主義化するだろう

 激しくイヤな予言。

2008年04月25日 lakehill religion 度し難いのは"信仰"ではなく、"人間そのもの"ということか

 いや、そう悲観的になることもないと思いますけど。人間性の向上というものに過度の期待をすれば裏切られるというだけで。
 文中わたしは自分の立場を「無神論的仏教者」と書いていますが、わたしが中観派仏教の人間観と捉えているものは、過去エントリ「わたしは左翼であるのかないのか、あるいはあるいは経済学をこのブログで取り上げる理由」で紹介した「束縛的価値観」とかなりの部分共通するものです。

2008年04月25日 FUKAMACHI 地獄アメリカ や、これはおもしろい。

 あなたの使っているタグの方がずっとおもしろいです。

2008年04月25日 Sinraptor 異なる考えを持つ無心論者を宗教に非寛容というラベルでくくってしまっている。ドーキンステロリズムイスラム教特有の性質によるものと考えてるなんて、著書を読めば違う事はすぐに分かるんだが。

 イスラム教特有の事情を強く主張しているのはハリスです。しかしドーキンスも『神は妄想である』英語版 p.307 でイスラム研究者を引用してコーラン解釈に踏み込み、「穏健なイスラム教という神話」という表現を使っています。また、イスラム教特有の性質ではないにせよ同 p.302-306 では一部の論者がよく言う「テロリズムの真の原因は、国際的な経済体制や過去の植民地主義、貧困や米国の軍事政策である」という主張を否定し、「宗教が」原因であると言っています。

2008年04月25日 saiesaie 科学 ドーキンスらの苦闘を簡単にちゃぶ台返し。論旨が疑似科学批判批判にそっくり。(「科学至上主義も一つの宗教じゃん」みたいな相対化。)一見穏当な記述を装いながら無神論者を頑迷な原理主義者と印象づけ。

 この人の方がよっぽど簡単にわたしの苦闘をちゃぶ台返ししているように見えますが。それに、わたしがやっているのは単なる相対化ではなく、無神論の立場から同じ無神論者の一部に見られる(そしてわたし自身も内面に抱える)不寛容な傾向を批判しているのです。このあたりは、次のエントリでちょっと書きます。最後に、「無神論者を頑迷な原理主義者と」印象づけているように見えたとしたら、前述した通りわたしの文才の無さのせいだとしか言いようがないですが、何か装っているつもりはありません。

2008年04月25日 screammachine 宗教, 無神論, うわごと, でもやるんだよ, ええやんけ, よくない, 読んだケド  「矛盾しているという事実」を認めるのと、その事実に対して「なるべく矛盾しないように働きかける」ことは、矛盾しないと思う。

 はい、それは確かに論理的に矛盾しませんが、そもそもわたしは「矛盾がない状態が理想である」という思想を原理主義に繋がるものとして批判しているのです。それにしてもすごいタグの羅列。

2008年04月25日 CrowClaw 凪の民, scientia, アメリカ カッコつけて哲学批判をしたは良いものの、その後自説の弁護に必死になったソーカルと同じ臭いが。「信仰」から逃れられる人間なんていないのにねえ。

 あー、だからそういう相対化はしたくないんですが… 【追記。そういう意図ではなかったそうです。ごめんなさい。】

2008年04月25日 banraidou 宗教, アメリカ, ヨーロッパ 確かにドーキンスの件の本、ちょっと引っかかるものがあったんだよなぁ。進化論上の論敵でもあったグールドの「神と科学は共存できるか?」の方がしっくりくる。

 わたしは、ドーキンスvsグールドなら圧倒的にドーキンス派ですよ。ってそんな単純な対立図式にする必要はないと思いますが。

2008年04月25日 ashigaru religion "I never really hated the one true god. But the god of the people I hated. " Marilyn Manson

 『ボウリング・フォー・コロンバイン』以来、単なるいい人としか思えなくなってしまったマンソン。

2008年04月26日 ttpooh Science, Society 高二病的?とか思った。/『西欧において近年目立ってきている排外的・不寛容的なリベラリズムの高まり』これが気になった。

 そっちが問題なんですよねー。次のエントリでもうちょっと書きます。

2008年04月26日 picolin152 religion 私が好きなクリエイターって無神論者がやけに多いんだよ/自分は限りなく不可知論者に近い。人間はそんなに絶対ではない

 ドーキンスは絶対的な無神論者ではないですよ。1から7までのライカート・スケールがあって、1が「神は絶対にいる」、7が「神は絶対にいない」だとすると、ドーキンスは限りなく7に近いけれども7ではない立場。それはかれが科学者として「絶対」を受け入れないからです。もし7の人だけを「本物の無神論者」とするならばドーキンスも「不可知論者」に含まれるのだろうけれど、6を超えたら「事実上の無神論者」と呼んで良いのではないか、くらいがドーキンスの考えですね。英語版 p.50-51 あたり参照。


 とりあえずはこんなところだけど、あとでブックマークが増えたら追加するかもしれない。
 ところで、わたしのブログであまり見慣れないブックマーカーが今回結構いるんだけど、疑似科学問題とかに関心のある層なのかな。わたしに批判的なブックマークコメントにお互い「はてなスター」をクリックしあってるけど、普段からの読者でないからかわたしのことなんだか誤解してそうな気がする。わけのわかんないブロガーが偉そうにドーキンス批判してるよ、みたいな感じ?
 まぁ誤解を与えるような文章を書いたわたしの責任が大きいんだろうけど、読む側ももうちょっと寛容的に読んでくれたら生産的な議論ができると思うんだけどな。だって「お前の意見はここがおかしい」というなら議論になるけど、「印象操作をしている」じゃ議論当事者として失格ってコトになってしまうでしょ。そりゃ世の中には議論相手にならない人だっているけど、いきなりわたしがそうだと決めつけないで欲しいのです。コメント欄にもコメントをお待ちしています。