あるフェミ団体における、ある種のコミュニケーション不全の話。

ツイッターでだらだらと書いた話を、まとめておく。
わたしが創設に関わった、あるフェミ団体の内紛みたいなものについて。代表者はいるけどあんまり権限とかがあるわけじゃなくて、まとめ役みたいな、よくあるゆるいフェミなグループ。
前任の代表者が、まあ前から結構高圧的なことがあって不満が高まっていたんだけど、人間関係につかれたのかしばらく団体を離れていて、そして戻ってきた。で、戻ってきた途端に、後任の共同代表者二人に対して、いつまでもメンターみたいなつもりで団体のあり方を押し付けたり、ここはこうでなくちゃいけない、みたいに変なところに固執したりして、問題発生。
新代表の人たちは、自分たちが軽視されていると感じるし、もう代表でもないのになんなんだと、嫌気がさして来なくなるメンバーも。で、ついに新代表の一人が、あなたのせいで辞めていく人がいる、と言ったら、彼女は猛烈に怒り出した。親切にいろいろ教えてあげようとしただけなのに、なんでこんな仕打ちを受けるんだ、失礼じゃないか、と。で、わたしに電話してきた。
わたしは、新代表の人たちがどう感じているのか、辞めていった人がなんて言っているのか、あなたの思っていることとは違うかもしれないけど、そう感じている人がいるのは事実だよ、みたいに説明したけど、納得できない、自分の助言が不要ならはっきりそう言ってくれればいいのに、と彼女は言う。でも、彼女の態度があまりに高圧的で、正面から言いにくい。それに実際、ほかの人たちは彼女が話している間それなりに迷惑そうな顔はしていたはずなのに。
ここまでで電話30分くらい経過。ここまできたらと、地雷を踏む覚悟で、あなたは新代表の人たちがあなたに対して失礼だというけど、あなたはほかの団体でもほかの人たちといろいろ問題を経験しているよね、と、彼女が過去に関わった団体をいくつか挙げた。その人は、ほかの団体でもいろいろ問題を起こして、追い出されたり、団体を閉鎖に追い込んだりしている。
過去にほかの団体で起きた問題一つ一つについて彼女の話を聞けば、それぞれ彼女が攻撃され追い出されたという印象を受ける。でも全部総合すると、彼女の側にも問題があるんじゃない?と。この時点でもう決裂は覚悟。予想どおり「全部わたしが悪いって言うの?」と怒りモード突入か、と思われた時、誰が正しいとか悪いとかじゃなくて、あなたはコミュニケーションで問題をよく抱えているよね、悪意がない言動で不快感を与え、周りの人が不満を感じていてもそれに気づかなかったりするよね、と言ったら、突然泣き出した。てか泣かせちゃった。
もう収拾がつかないかな、と思った時、意外なことを彼女が言い出す。彼女はここ半年ほどパートナーから「アスペルガー症候群じゃないの?」と言われ、ネットで調べたら描写がことごとく当てはまることに驚いたり、医者に相談したらアスペルガーの疑いが強いからと専門医を紹介されたり、自分はコミュニケーションが不得意なんじゃないかと気づきかけてきているところだったらしい。泣きながら「だから不満があるならはっきりそう言ってって言ったのに!なんでいままで誰もはっきり言ってくれなかったの?」という彼女。そこではじめて彼女の置かれた困難がよく分かった。
彼女は悪い人じゃないし、他の人のことをリスペクトしていないわけじゃない。ほんとうに、自分の言動がどう受け取られているのか、どうリアクションされているのか、わからないんだ、と思った。ほかのメンバーたちが、彼女を傷つけることを恐れ、あるいは喧嘩になることを恐れ、オブラートに包んで彼女に伝えてきた不満は、彼女にまったく伝わっていなかった。まるで、お互い異なる言語で話していながら、どちらもそのことを意識せずに、齟齬ばかりが生まれていた感じ。
「なんではっきり言ってくれないの」と言われても、彼女に伝えるためにどれだけはっきり言わなければいけないか、わたしたちも分かっていなかった。非定型の人が典型の人とコミュニケーションを取りづらい以上に、定型の人は非定型の人とコミュニケーションを取る方法を知らない。仕方ないよ、アスペルガーの人は定型の人と折り合いをつけて生きなくちゃいけないけど、定型の人はそんな努力をしなくても生きていけるから、他のメンバーたちだって、どれだけはっきりと言わなくちゃあなたに伝わらないのかわからないんだよ、と言ったら、笑った。
さいわい、彼女は自分自身のことをもっと良く知ろうといろいろ読んでいるようだし、医者にも相談している。わたしが知っている自助グループも紹介した。新代表の二人にこの話をしてもいい?と聞いたら、了承してくれた。日曜日に次のミーティングがあるので、その前に新代表と話す予定。
正直な話、ちょっと前までは、彼女のせいで他のメンバーが離れていくくらいなら、彼女が自分から出て行くように仕向けるしかないかもと思っていた。彼女の逆鱗にどう触れればいいかも分かっている。地雷を踏む覚悟で、というのは、最悪そっちの方向に向かっても仕方がない、と思ってのこと。でも、彼女がコミュニケーションの苦手さに自分で向き合っているなら、支えることができる。そう思った。面倒なタスク抱え込んじゃった気もするけど。