「在特会に対する切断操作はよくない」のは、在特会がかわいそうだからでも、かれらの言論の自由を尊重するためでもありません。
ひさしぶりの更新になりますが、例によって本家エントリ「在特会と通じる性質を見せる『反在特会』の取り組みと、『上から目線のエセインテリ』へのブクマコメントにお応えしちゃいます。ただし、ひびのまことさんが批判している通り、「朝鮮学校をどう支えるか」という、本来論じられるべきポイントから逸れた話が論じられず、「日本人の運動をどうするか」という問題に論点がスライドしてしまうという問題も意識しておきます。
BigHopeClasic 政治, 社会 これは難しい話だけど、在特会を切断するなというのはそのとおり。 2009/12/22
t-kawase politics, philosophy リベラルの持つパラドックス。こちらを否定する者をも認めなければ、という。また、向こうはこっちの「リベラルさ」につけ込んでくるからなあ。「戦勝報告」みたいでなければこじれなかった話。 2009/12/2220
h3f 在特会, 共生 この記事がなんなのかわからないけど、こんなのパラドックスだとは全然思わない。在特会という思想を攻撃するための集会なんだから、その思想(とその行動)を理由に排除したっていいだろ。 2009/12/22
samuraidaishou 在特会, 社会 そんなに難しい問題?逆に、それが例え在特会の(他者の領域に踏み込んで罵声や妨害をしないケースの)集会でも、実績から十分に過激な左翼の妨害が予測できるなら、表現手段を守る為に左翼排除するのはアリでしょ。 2009/12/22
mujige 不寛容に対する寛容は、不寛容な社会を生むだけ。社会的少数者を排除し、差別し、その自由を奪う者たちに対しては、不寛容あるのみ。 2009/12/22
type-100 政治 あらゆる暴力を否定するようなイノセントすぎるアナーキズムには賛成出来ない。 2009/12/23
death_yasude ヘルメットとかゲバ棒とかちゃんと準備した?/http://d.hatena.ne.jp/dondoko9876/20091214/1260728636こういうの見ちゃうと馬鹿にする対象が違うだけで得ている快楽は同じ様なもんだよねって思うのさ別の話だけど 2009/12/23
peppers_white 迫害は不安から生まれるのだし、解決したければ双方の歩み寄りがうんぬんかんぬんで大事 2009/12/23
yohata まあ、自分たちサイドの反社会性は「綺麗な反社会性」「俺と味方は特別扱い」が左曲がりの伝統なワケで。そんな無自覚差別主義者が集まれば、こうなるのは当然と言える。 2009/12/23
bebebe 目的のためなら手段を問わない正義、排外主義者を排除する排外主義。他人は自分の鏡。気付いてなければ恐ろしい、仕方ないとするも小手先の理屈でかわすのも危うい。いずれ自分に返ってくる。 2009/12/23
taka6327 自身の排他性・攻撃性に対する戒めは常にもっていきたい。 2009/12/23
Midas ブログ主が正しい。完全に実務的な面からだけ言っとくと、それでも警察や権力に頼るのは自殺行為。必ず組織内部に「あいつは(体制の)スパイ」争いが起きる。このままでいくとかつての闘争と同じく抵抗側から自壊する 2009/12/23
nekoluna 排外主義者を排斥するのは排外主義者と同じという話 同意 2009/12/23
Kakinoki2nd 在特会(&その支持者)はどうしようもないクズだと思うけど、だからと言ってその思想だけを理由に彼らを排除するのは違うと思う。いろいろ悩ましいけどこのブログ主さんのこだわりを私は支持する。 2009/12/23
casm 「市民を守る警察が、同じ市民であるヤクザを悪し様に扱うのは間違っている」と同じ程度の理論。 2009/12/23
切断操作(在特会を自分たち市民社会とは異質の存在として切り捨てること)はよくない、という点は、多くの人が言っていることですが、その理由をきちんと理解していない人が結構いるように思います。以前にも、米国における「新しい無神論者」たちが、原理主義宗教の不寛容さを批判しながら、かれら自身が不寛容になっていることを批判的に紹介したら、ただストレートに「不寛容な相手にも寛容でなければいけない」と主張しているかのように読まれてしまって、あわててそんな単純な話ではないと訂正したことがあります。
「不寛容な相手にも寛容であるべきだ」と、たしかにわたしは主張しています。でもそれは、不寛容な相手をただそのままのさばらせるためであってはいけないはずです。わたしが「寛容であるべきだ」と考える一番の理由は、「不寛容な相手に対する不寛容」を口実として、「わたしたち自身」が単なるベタな不寛容に陥ることがあると知っているから。たとえば無神論者のケースであれば、欧米におけるイスラム系移民に対するバッシングを「やつらは男女平等や同性愛者の権利、あるいは言論の自由という、人権概念を理解していない、受け入れない」として正当化するロジックが例にあげられます。つまり、わたしはキリスト教原理主義を無神論者たちの批判から守るために寛容を主張しているのではなく、かれらよりずっと力の弱いコミュニティを守るために、「不寛容に対して寛容でいる必要はない」という行動原理に歯止めをかけようとしているのです。
仮に「わたしたち」自身はそのような形でマイノリティ排除に「不寛容な相手に対する不寛容」を濫用しないとしても、どのような理由であれ排除を手放しに正当化する大義名分を認めてしまえば、マイノリティを排除しようとしている人たちにもその大義名分を使われてしまいます。だからこそわたしは、プラグマティックな決定として「排除はやむをえない」場合があることを認めつつ、それはあくまで「やむをえない、本来あまり望ましくない措置である」という認識を持つべきだと主張しているのです。
また、在特会のような「わかりやすい、カリカチュアライズしやすい悪」を「わたしたち」とはまったく別のものであるとして切り離すのは、問題の深刻さを見失うということにもつながります。本文でも書いたことですが、問題は在特会が存在しなければそれで済むというようなものではなく、今回の事件に即して言うならば、そもそも日本政府による民族政策(とは自覚されない、日本人中心主義)に基づいた教育行政が、朝鮮学校を弾圧し日本人民族教育を行う「一般の」学校と差別していることが問題ですし、それはもちろん教育行政だけの話ではありません。在特会を切断操作するということは、問題の本質がごく一部の珍奇な集団の行動にあるのではなく、広く日本社会に共有された日本人中心主義にあることを隠蔽してしまいます。
まとめると、「在特会を切断するな」というのは、在特会がかわいそうだから主張しているのではありません。排外主義を主張する自由を尊重するからでもありません。そのように解釈している人たちは、わたしに好意的な人もそうでない人も、わたしの主張を誤読していると思います。在特会の権利なんてどうでもいいけれども、だからといって安易に在特会を排除してしまことには弊害があると主張しているのです。
このあたり、あくまで相手を切り捨てないこと自体に価値があるとする、ボニー・ティンカーさんら非暴力主義の考え方とは違います。非暴力主義は、あくまで自分を律するための考え方としては一定の共感を感じますが、「わたしたち」みんなが身につけるべき行動原理だとは思いません。ガンジーもキング牧師も、一人の信仰者としてはそのような絶対的非暴力主義を受け入れながら、そしてまた自分と同じ信仰を持つ人にはそれを訴えながら、アパルトヘイトやヴェトナム戦争のような大きな国家暴力に対する武装抵抗運動には好意的でした。
genosse 政治 単に在特会の連中を「異物」として排除するのは無意味。会を(悪魔でなく人間の集団として)研究して、彼らが活動する理由や背景は何なのか突き止める必要がある。特にこれは、知識人の方々にやって貰いたいのだがね 2009/12/22
聞いた話ですが、当日会場からは「貧困のせいで若者が排外主義に走っているのだ」とか「教育が悪い」とか、おなじみの主張が聞かれたそうです。あまりにデタラメで、がっかりですね。でも、在特会を排除するのが無意味なように、在特会に特有の「理由や背景」を突き止めることもまた無意味でしょう。問題は在特会じゃないと思うので。
usi4444 http://www.youtube.com/watch?v=KXsNgEpnno8 id:macskaさんはこの若者を非難するの?警察が乗り出さないギリギリの暴力を振う狡猾な連中相手に冷静でいられる強靭な人ばかりではない。暴力に晒されている人をどう守る気ですか? 2009/12/22
え、なんでわたしがこの人を非難することになってしまうの? 圧倒的に支持しますが(というのもおこがましいですが)。
nagonagu 「たかだか在特会」という言葉遣いに違和感大。 2009/12/2320
gerling そりゃお前目の前で怖い人が怒鳴ってなきゃどうとでも言えるわな 2009/12/23
Prodigal_Son これはひどい, 在特会 「たかだか在特会」だのと現場にたたねえ奴がよくいうよ/理論武装した「妃都」みたいだな。 2009/12/24
たしかに、目の前にいたら「たかだか在特会」とか言ってられないですね。しかしわたしの目の前にはいないから、あんなどうでもいい小集団が焦点になっているのが、ばからしく感じられます。
ちなみに、うちの近所にも、ナチスの旗を飾ってある家とか、結構怖い人たちはいますけれど、リベラルな白人たちがそういう一部の過激な人種差別主義者を非難することで、自分たちは反差別主義なのだという安心感を得て、より社会で受け入れられている白人中心主義(および、それによって利益を得ている自分たち)を問わずにいることがうざいです。
hituzinosanpo 社会 冷静になることは だいじ。けれども、冷静では いられなくなってしまうことも うけとめたい。どんな主張を しようが「多数派日本人」は謙虚さを しらないと いけない。「えらい日本人」はいない。平等を達成するまで 2009/12/23
いやまったくそのとおりです。わたしは「自覚」(もっと言うと自省的関わり)が必要だと言っていますが、「謙虚さ」も大切です。わたしももっと謙虚になれるよう努力します。
andalusia justice そういえば名大の大屋准教授も、フリーソフトウェア運動(ストールマンさんのあれ)に、copyright に反対するのに copyright を利用している構造について触れていたな。自己矛盾は許容されて良いけど無邪気すぎるのはね。 2009/12/23
いや、フリーソフトウェア運動がcopyrightを利用するのはまったく問題ないのでは。ストールマンって、copyright全廃論者でしたっけ? まあかれは、問題のないところに無駄に問題を作り出しちゃうタイプの人だけどさ。
むかし、ストールマンさんがわたしが作ってネット販売している缶バッジを欲しくなったみたいで、注文しようとしたんだけど、「自分の住所のような個人情報を渡さずに購入できないのか」って文句言ってきて、それなら発送先に私書箱でも友達の家でも勝手に指定しろよと思ったんだけれど、なんだかよく分からない反応でした。
nessko 正論ですが、あのとき集会を主催する側は、在特会に乱入されて集会がまともにできないのではと心配していたわけで、無事集会が終わった後、警察が来てくれてよかったと言うのは不自然じゃないと私は思いました 2009/12/23
うん、それは不自然じゃないですが、理解できるからといって何も言わない方がいいとは思わないのです。本家ブログのkgrさんへの返答で書きましたが。
F1977 文体批判は結構ですが、この百年来、警察や国家権力は一貫して朝鮮人を管理し弾圧してきたのであり、61年前には少年一人を殺しているのであり、その文脈に基づいての今回の行動であったとまず読むべきだと思います 2009/12/23
つまり、そんなことお前に言われるまでもなく自分たちはとっくにわかっている、ということですね。それはそのとおりかもしれないですが、現に分かっていない日本人が何人もメーリングリストにいたから、あそこまで揉めてしまっているんです。
md2tak わかる。よ〜くわかる。必要なのは対話。 2009/12/23
いや、対話は結構ですが、あの場面は対話する場面じゃないでしょう。あそこで対話しろとまでは、さすがにわたしも言わないです。
noiehoie 在特会, あとで書く, 左翼はいつもこうだ, よくある話 こうやって「俺たちのほうがあいつらを批判する資格がある」という資格論や、「そのやり方には同意しかねる」という方法論でガタガタ言ってるうちに、在特会および「在特会的なるもの」はどんどん増殖するわけで。 2009/12/23
方法論でガタガタ言いつつ、同時に在特会にも対抗すればいいのでは。というか、「在特会的なるもの」とは、日本社会のことであり、日本のサヨク的運動もそれから無縁ではないですよ。
sillyfish 差別 警察という国家権力に対して、無邪気ではまずいのは同意/でも、差別によって口を塞がれているひとが安心して発言するために属性で参加制限する集会も必要で、その辺のバランスは現場のひとが一番考えてるのでは 2009/12/23
現場の人は考えていると思いますが、その考えがきちんと共有されなかったために、メーリングリストで紹介された時点で既に無邪気に受容されていました。だから、警察に頼ったことや在特会メンバーを排除したことそのものではなく、それがどのように語られるかに問題があると指摘したのです。
masudamaster 秘密主義メーリングリストとか怖いからやめろ 2009/12/23
maangie 在特会 「千人を超える参加者を集めているにも関わらず、その存在を明示的に言及することすら禁止されているという、おそろしいメーリングリスト」なんとなくフリーメーソン陰謀論者のような匂い。 2009/12/24
いやもう、今回のことで、本当に秘密主義が必要な議論の足枷になっていると感じました。このMLって秘密主義が徹底していて、「転送自由」な呼びかけが投稿されるときも、転送したついでに元のメールのヘッダが残るとMLの存在がバレてしまうから注意してください、みたいな呼び掛けがあったくらいです。どうにかならないかなぁ。
EoH-GS 社会, 差別 id:macskaさんが驚いた集会報告はこの集会のたった一人の主催者が書いたもの。情況を考えれば無理もない言葉。彼自身集会では「右翼担当、左翼担当、朝鮮人担当の警察官が来てくれました」と皮肉ることも忘れなかった。 2009/12/23
状況を考えれば無理もないけれども、疑問に思った人がみんなそんなに物分りがよくなってしまったら、疑問に思わない人が思わないまま放置されてしまいますよ。特殊な状況に置かれて戦略的に「警察偉い」と言ったのに、ベタに「そうだ警察偉いぞ」と伝わってしまうのは、戦略的な発言をした人にとっても嬉しくないのでは。
わたし自身、状況や立場によって戦略的な発言をせざるをえないことはありますよ。「こんなの本当に自分が考えていることじゃないよ!」とはアピールしたい、自分が本当は何と言いたいのか分かって欲しい、とも思います。そういう時に、わたしより自由な立場にある人が、わたしが言いたかったことをビシッと言ってくれたら、その場では「そんなこと言われなくてもわかってるよ!」と叫びたい気持ちになるけれども、そういう発言がなされたということは嬉しいと感じます。