某誌のジェンダー座談会で不完全燃焼

 まだ完全に回復したわけじゃないけど、前に一度延ばしてもらったから仕方なく某誌の座談会に出る。と言っても電話で参加だけど。テーマは「ジェンダーの未来」で、相手はトランスジェンダーの活動家と男性学やってる心理学者。
 バックラッシュが起きている背景として、ネオリベラリスティックな社会の流動化に対する不安が、「伝統」から切り離された「選択」「自己決定」を体現しているかのように見えるLGBTの人たちやフェミニストに転位されているあたりのごく当たり前の事を話したんだけど、ちょっと話が噛みあわない。
 トランスジェンダー活動家は口先で軽くネオリベラリズム反対みたいに言うけれど、流動性の高い社会というのはわたしたち自身が求めてきたものであり、そんなに簡単に履いて捨てることはできないと思うのね。心理学者の方は、ネオリベラリズム心理的な不安を巻き起こしている事までは理解しているのだけれど、その不安が経済的なリアルさを伴うものである点を分かっているのかちょっと怪しい。
 結局、保守派が不安を煽ることで人々に自分自身の経済的利害に反する投票行動をさせることを倫理的に批判するだけで時間がきて終わってしまった。倫理もクソもない相手を倫理的に批判しても無意味であり、不完全燃焼。相手が不安を煽る名手であることを押さえたうえで、どうやって不安にまつわるオブセッションを解消するか、不安の元となるリアルな経済的状況そのものに関心を集めていくか話せたら良かったんだけどな。
 ま、そもそもジェンダーがテーマの話を無理矢理ネオリベラリズムの議論に持っていっただけで良しとしようか。