無知で無恥のバカって、手がつけられないよね

 勝手に「macska に惚れ込まれた」と名乗ったりしてストーカーっぽいのが気色悪いから放置しておこうかと思ったんだけれど、先日の「フォビアで苦しむのは、フォビアを抱えている当人の側」という記事で紹介したある論文について、勘違いストーカー野郎がこう言っている

 同女史が、文中で引用している文献及び記録についてだが、実は何も科学的な根拠のない妄想の代物ということがはっきりしている。
 女史が引用した文献の根拠は、ユダヤ系ドイツ人、フロイトが約100年前に作った似非学問《心理学》でいう、《投影》である。
 学者、デヴィッド・S・ホームズは『投影が実際に起きることを裏付ける研究結果はいまだに提出されていない』とし、『人間の行動を理解ないし説明する際に、この概念を使用することは認められない』と述べている。
(ロルフ・ゲーデン著、『フロイト先生のウソ』pp.187-189より。)

 あきらかに、問題となっている論文を読んですらいない。せっかくダウンロードするための URL まで紹介しておいたのにね。
 「投影」とは、自我が自らを防衛するための仕組みの一つとしてフロイトが提案した概念で、自分が抱いてしまった望ましくない欲求や感情を「他人のもの」と決めつけることで内的な落ち着きを取り戻すことを指す。このストーカーさんは、わたしが紹介した文献はフロイトの「投影」理論を根拠としており、「投影」が実際に起きることは証明されていないから、「妄想の代物ということがはっきりしている」と書いている。どこからどこまでも間違いだらけだ。
 まず第一に、この論文はホモフォビア精神分析の手法で分析したものではない。精神分析ではなく実証的な調査によって「アンケートなどで強い同性愛嫌悪を表明する人の方が、実際に同性愛のセックスシーンの画像に性的に興奮する」ことを示しているのね。
 もちろん、実験で明らかになったのは「そういう結果になった」ということだけであり、どうしてそうなったのかは解明されていない。同性愛嫌悪の強い集団の方が同性愛ビデオにより性的に興奮したことについての合理的な説明を著者らはいくつか挙げており、精神分析が推測するような説明もいくつかある仮説の一つとして有効だ。
 デイヴィッド・S・ホームズという人物は行動主義の立場を取る心理学者だから、「心理学が扱う対象は目にみえる行動だけにするべきで、ある行動を起こした心理的な理由は何かと問うても仕方がない」と考えるかもしれないけれど、わたしは全面的には賛成できない。行動主義の持つ明快さという魅力は認めるけれど、精神分析で使われている概念が一切実証不可能というのは間違いだもの。試しに PsychINFO(心理学論文データベース)をちょっと覗いてみたら、投影はじめフロイトによる「防衛機制 defense mechanism」についての実証的な empirical 研究がたくさん見つかったよ。わたし自身、精神分析という体系全体のあり方についてはかなり懐疑的な立場なんだけれども、「精神分析にはこういう欠点がある」みたいな事を言うと「精神分析に関連した全ては妄想の代物」と勘違いするどうしようもないようなバカは困る。
 バカと言えば、その「防衛機制」についてもこのストーカー君は間違い。投影というのは、自分自身の同性愛的傾向を恐れる人が、「お前って同性愛者だろ」「あいつは同性愛者なんじゃないか」と決めつける場合を指すのであって、極端な同性愛嫌悪を募らせることを「投影」とは呼びません。実際、この論文では実験結果に対する有力な説明の一つとして、投影ではなく別の防衛機制のはたらきを指摘している。

... Another possible explanation is found in various psyhcoanalytic theories, which have generally explained homophobia as a threat to an individual's own homosexual impulses causing repression, denial or reaction formation (or all three). (p.444)

 「抑圧 repression」は本人にとって認めたくない欲求や感情を押さえつけて意識から追いやること、「否認 denial」はそういった欲求や感情の存在そのものを否定すること、「反動形成 reaction formation」は欲求や感情を誤摩化すためにそれと正反対の行動を起こすこと。いずれも「投影」と並ぶ自我の防衛機制のパターンであり、もしこの論文の内容がフロイトと関係があるとして批判したかったなら、「投影」ではなくこのどれかを選ぶべきだった。でも、そんな理解力ないの明らかだし。
 心理学を「似非学問」と言いながら、自説に都合のいい時は心理学者を引用するあたりもバカ丸出し。前からこのストーカーの「批判」は内容の是非以前の問題として的外し過ぎだなぁと思っていたのだけれど、結局内容を読みもせずにエラそうに全面否定するだけのバカだからこうなっちゃうのね。
 と以上、またあんたのサイト宣伝してあげたから、気色悪いこと言うのはやめなさい。
 わたしのことを「macska婆」と呼んでも「女史」でも、そんなことはどうでもいいから。


# でも、伝統の重視を主張する人間なら、老人は敬えよ。


 しっかしー、こんな悪趣味なエントリばかり書いてたら、読者離れるな。