スティーヴン・コーベア解説パート2

 先日わたしが解説を書いた町山智浩さん訳のスティーヴン・コーベアのジョークですが、指摘を受けて町山さん内容をが一部修正されたようです。
 それはいいのですが、前回解説をつけ忘れた部分があるのでさらに追加。前回通り、単なる誤訳はスルーしてジョークの解説になる部分だけ。

私は自分の番組『コルベア・リポート』で、肝っ玉から話しています。いいですか? 視聴者に真実を伝えているんです。論理的な考察というフィルターなしに! 私はこれを「ノー・ファクト・ゾーン」と呼んでます。この名前、FOXニューズは勝手に使わないように。(FOXニューズがいつも事実をブッシュ政権の都合のいいように捻じ曲げて報道していることをからかっている)

 この「ノー・ファクト・ゾーン」というのは、FOX News の看板番組 The O'Reilly Factor のスローガン、「ノー・スピン・ゾーン」のパロディですね。だからこそここで FOX News の名前を出して「勝手に使わないように」(原文では、「著作権登録したからね」)と言っています。

そういうことが秘密なのには重大な理由があるんですよ。すっげームカつく事実だからです。国民を嫌な気分にしたかったのなら、マスコミはよくやったと思いますよ。

 この「よくやったと思いますよ」の部分は原文では「Misery accomplished.」。嫌な気分を実現しました、という意味で表現としては変だけれど、これはブッシュが3年前に「Mission Accomplished」と大書された垂れ幕の前でイラク戦争における「重要な戦闘」の終焉を宣言した(けれども、実際には全然終焉していない)ことをからかうジョーク。
 ついでに町山さんのラジオのコメントにも解説をつけておくと、この晩餐会の主催者はホワイトハウス記者クラブだから、コーベアを選んだのはホワイトハウス関係者ではない。このイベントでは毎年コメディアンが登場して政治的なジョークを披露するのが慣例で、クリントン大統領の時代にも大統領に批判的な人が選ばれたことがあり、今回コーベアが招かれたのは特に手違いというわけではないと思う。それくらいのジョークは笑い飛ばせるようでなければ大統領は務まらないということ。コーベアのジョークは確かに強烈だったけど、ブッシュ自身だって(広く報道された「そっくりさん」とのコントで)チェイニー副大統領の誤射事件をネタとしたジョークを言っていたりするし。
 ところで、あの「そっくりさん」、全然似てないような気がするのはわたしだけですか?


(さらについで。Pink の Dear Mr. President に出て来る "What kind of father might hate his own daughter if she were gay" は仮定法であって、特にチェイニー副大統領の話はしていないと思いますけど。現にブッシュと違ってチェイニーは同性婚禁止憲法修正案に反対らしいし。あと、"you don't know nothing about hard work" が何を揶揄しているか分かってますよね?)