デビューボふたたび?(Wikipedia「フェミナチ」項目について)

 Wikipedia で「フェミナチ」の項目を見ていたら、

アメリカの保守の論客として知られるラッシュ・リンバーグが、彼主催のラジオ番組にて頻繁に使用したことを起点に広まった用語。

 あのー、それって Rush Limbaugh のことでしたら、「リンバーグ」じゃなくて「リンボー」ですー。「リンバーグ」と読むのは、ドーナツのことをドーグナツと呼ぶみたいなモノです。
 ついでにその他の内容について。

類義語としてはジェンダーウォリアー(GenderWarrior)、メンヘイター(MenHater、男性憎悪者)などがある。

 まず、「ジェンダーウォーリアー」なんて言葉はありません。もちろん、日本語で「ジェンダーの戦士」という表現が可能なように、英語でも「gender warrior」という表現はできるけれど、フェミニストに対する蔑称として確立した用語ではないです。
 それから、男性を憎悪するのは「man-hater」であって、複数形の men はこの場合使いません

なお、英語においてフェミニストはその語の通り「男女平等論者」でなく「女性主義者」を意味し

 それは単なる語源ですね。フェミニズムという英語の元となったフランス語 féminisme を考えたのはシャルル・フーリエという19世紀の男性で、その言葉によってかれが主張したのは、女性にも男性と同じ権利を与えるべきだということでした。現在でも、英語においてフェミニストという言葉は普通に「男女平等論者」という意味で使われています。

本人の発言によれば、語自体は友人であるカリフォルニア大経済学教授のトム・ハゼルトが作ったものであるとのことらしい。

 トム・ハゼルトと呼ばれている人の名字の綴りは Hazlett。これを何と読むのか確認してはいないけれど、普通の読み方ならヘーズレットが正しい。どう間違ってもハゼルトとは読まない

女性学において男女平等の観点から遊離した女権論を批判するときは女権論全体に対する侮蔑用語と見なされるされるいフェミナチでなく過激派(Extremist)あるいはジェンダーフェミニスト(GenderFeminist)などが使われる。

 女性学に限らずどんな学問でも「フェミナチ」なんて言葉は使いません
 また、学問的な批判はレッテル貼りではなく意見に対する論評なので、過激派 extremist ではなく過激 extreme という言葉なら使われます。
 gender feminist という言葉については、「シモン・デビューボ」で有名なエドワーズ博美さんがネタ元としている保守派哲学者の Christina Hoff Sommers が作った用語で、彼女は男女同権を求める equity feminism と区別して、ジェンダー制度の解体を目論む(彼女の視点からは)過激なフェミニスムを gender feminism と批判します。が、女性学における用語ではないし、一人の論者が使っているだけであり一般的な用語ではないです。一般人だけでなく、ほとんどのフェミニストにだって「gender feminism」なんて言葉は通じません。
 さらに付け加えると、この項目はリンボーによる「フェミナチ」の本来の定義(「できるだけ多くの胎児を中絶することを目論んでいるフェミニスト」)が書かれていないばかりか、「ナチ」という言葉を単なるフェミニストへの侮辱語として使うことが、フェミニストだけでなくナチの被害者やその遺族に対して非常に失礼である点も書かれておらず、非常に不十分です。
 上記の点について直しておこうかとも思ったけれど、某掲示板で「フェミナチ」として監視されているらしいわたしが訂正するといろいろと面倒な言いがかりをかけられそうなので、フェミでもなんでもない普通の良識ある方が直してくださると嬉しいです。


【追記】
 いま見たら、なんか中途半端な訂正がしてある。