イラン暴動の原因は安過ぎるガソリン価格(?)

 普段あんまり取り上げるタイプの話題じゃないんだけど、イランのガソリン問題について。

イラン石油省は27日から、約800万台の国内全車両を対象に、私有の普通車で1カ月に100リットルが上限などとする配給制を実施した。産油国での配給制は異例で、イランでは80年代のイラン・イラク戦争以来だ。発表は実施の1時間半前で、首都のガソリンスタンドには数キロの列ができ、怒った市民が5カ所で放火。治安警察が多数出動する騒ぎとなった。


asahi.com : 産油国イラン、ガソリン配給制に 混乱、首都で暴動も

 そもそもの問題は、明らかに政府が決定したガソリンの価格が常識はずれに低過ぎること(そして、そのために消費者の動機形成が歪んでいること)じゃないかと思う。上記リンク先からさらに引用すると、

石油輸出国機構(OPEC)第2位の産油国イランでは私有車の増加にガソリン精製所増設が追いつかず、1日7800万リットルの消費量の約4割を輸入に頼る。一方、ガソリン価格は政府の補助金で1リットル=1000リアル(約13円)と極端に安く抑えられ、都市部では「マイカー通勤族」も多い。

 ここまで国際価格からかけ離れて安い価格だと、燃費のいい車に乗ろうとか、無駄に車で遠出はしないでおこうとか、誰も思わないんじゃないのかな。例えば、近所の店で買えばすむモノを、ちょっとした理由で少し離れた大きな街の店まで出かけるというようなことがあっても不思議じゃない。
 個々の消費者がそういう選択をすることはその人個人にとっては合理的だけれど、個人が「得した」「いい思いをした」分だけ、社会全体で見れば政府の補助金や大気汚染による健康被害という形でみんながそのコストを負担している。でも、国際価格からかけ離れた価格を政府が無理矢理維持しているために、個々の消費者は自分たちの行動を是正する動機に乏しい。
 おそらくイランではそういう仕組みで他国なら絶対やらないようなガソリンの無駄遣いが大々的に放置されてきたために、国内の精製所による供給が追いつかなくなったのではないか。そして、供給が足りないと上昇するはずの価格が政府の政策によって据え置かれていることと引き換えに、結局「配給制の導入」という形で国民が不自由を強いられている。いや配給制で済んだらまだいいんだけど、先に述べた通り大気汚染による国民の健康被害という形でもそのツケは払わされている。
 なにも国際価格までガソリンの価格を上昇させろと言うつもりはないけど(いきなりそんなことやったら、暴動どころじゃ済まなさそうだし)、もしイラン政府が本気でガソリン消費量の抑制や大気汚染削減を目指しているなら、ガソリン価格をもうちょっとまともな水準にしてもいいんじゃないかな。せめて、配給制にしなくても国内の供給が不足しないレベル程度には価格を上げても良さそう。
 「それじゃ貧しい人や仕事にどうしても車が必要な人が困る」と思うかもしれないけど、だったらガソリンの価格を補助金によって下げる代わりに、その分現金で国民にバラまいてしまえばいい。それでもこれまでと同じだけガソリンがどうしても必要な人は高い値段で買えばいいし(プラスマイナス0だ)、いやそんなに高いならガソリンはいいから別の物が欲しいという人はそうすればいい。一部の人はより燃費のいい車に乗り換えて、ガソリン消費量が減った分だけ手元にお金を残そうとするかもしれない。「現金バラまけ」は極端だとしても、要は、ただ価格を上昇させることの弊害が懸念されるのであれば、動機形成を歪めないような形に補助金のあり方を作り直すのが良いんじゃないかと。配給制では歪んだ動機が満たされないまま温存されるので、不全感からこれからも暴動が起きるかもしれない。
 イランの情報を全然知らないので、なんかとんでもない勘違いしてたらごめん。