クォリティーフェミニズムってそれなんだよ

 ちょっと前のエントリだけど、世界日報で話題の在米ジャーナリスト(ウソ)山口智美さんから「こんなのみつけたよ」と教えてもらったので在米日本人によるアメリカ保守っぽい(つまり、日本の保守派じゃなくて、アメリカの保守派に似た意見を載せている)ブログ「苺畑より」の「ジェンダーフリーという神話」というのを読む。ジェンダーフリー云々については過去に書いたことの繰り返しになるので省略するけど、注目はここ。

アメリカのフェミニズム、つまり女性運動は一般にジェンダー(性別)フェミニズムとクォリティー(質)フェミニズムに分かれるが、ジェンダーフリーというのはその言葉からして性別を完全に無視したものという印象を受ける。フリーという英語はこの場合「〜ぬき」という意味になるからだ。だから多分アメリカでいうところのジェンダーフェミニズムと共通するものがあるのだろうという憶測はできる。
http://biglizards.net/strawberryblog/archives/2007/11/post_591.html

 これを紹介してくれた山口さんは、アメリカのフェミニズムを「ジェンダーフェミニズム」と「クォリティーフェミニズム」に分けるなんて話は聞いたことがない、一体どこから出て来た話なんだろうと言っていたのだけれど、この種の議論を知っている人にとってソースははっきりしている。保守派哲学者クリスティーナ・ホフ・ソマーズが代表作『Who Stole Feminism? How Women Have Betrayed Women』(「デビューボ」でおなじみのエドワーズ博美氏のネタ元)で主張している「ジェンダーフェミニズム」と「エクイティフェミニズム equity feminism」を間違って覚えているだけ。そもそもソマーズの分類自体一般的なものではない(スティーブン・ピンカーが紹介して知られた程度で、一般には使われない)のに、「アメリカでは一般にこうである」とまで言って間違ってるんだから、どーしよーもない。
 ソマーズって人は(ジェンダーや女性問題に限らず、さまざまな分野において)極右と言ってもいいくらい超保守的な論客なんだけれど、すごく頭のいい人であることは誰でも認めるところ。ところがソマーズの主張を読んで偉そうに解説する論者たるや、ボーヴォワールも知らないエドワーズ博美氏やエクイティをクォリティにしてしまうこの人など、中途半端な知識で知ったかぶりする人が多いような気がする。ソマーズ氏も気の毒かもしれない。
 まぁそれはともかく、「アメリカ保守の真似をする在米日本人ブロガー」ってあんまりいないので、苺畑さんの今後に期待します。