話が通じないのは不便だな

 前エントリに早くも空さんが反応いてくれた様子。ていうか、どうせ反応するなら「空さん」と呼ぶのが正しいのかどうかはっきりして欲しかったのだけれど、それはともかく内容。

わたしはここで空さんが「日本は謝罪を補償を提供した」と書いているのは間違いだと思うけれども

と思うというだけで理由は述べない。
ところが、小泉首相の手紙、河野談話など、そしてアジア女性基金を引用するまでもなく、日本は謝罪や償いの提供をしてきたのである。謝罪の方式などに批判があることは承知しているが、それは謝罪していないということにはならない。
http://blog.goo.ne.jp/kentanakachan/e/bb006854af831f20f2238d71da36e342

 それは、既に述べているから繰り返していないだけ。
 謝罪については、わたしはこう書いています。

閣議決定もしくは国会決議を伴う公式謝罪。これまでにも謝罪らしきものはあったのですが、閣議決定や国会決議という手順を踏まえていなかったために、いまでも「あれは政府として公式に認めたわけではない」という主張が有力政治家などのあいだからも絶えず、結果として公式に謝罪したのかどうかが曖昧になっている。
http://macska.org/article/209#comment-302945

 ここで分かるように、はっきりと「日本は謝罪した」とは言えない、というのがわたしの考え。と同時に、わたしは「謝罪していない」とはっきり明記したわけではないので、「謝罪していないということにはならない」と書かれてもそれはわたしの記述を否定したことにはならない。わたしの認識は、上にある通り「謝罪したのかどうかが曖昧になっている」というものだもの。
 ていうかさ、以前はわたしも米国人や在米コリアンに対して「日本が謝罪していないというのは間違っている、不十分だという意見があるかもしれないが一応の謝罪はしている」と反論していたのよ。だけど、あんまり続々と日本の有力政治家が「あれは公式謝罪ではない」とか言い出して、そのうちそういう政治家の一人が首相にまでなってしまった段階で、「日本は既に謝罪した」とわたしが言い続けるのは誠実とはいえないと思うようになったのね。
 補償について空さんは、日本は「償いの提供」をした、と文学的な表現をしていて、たしかにアジア女性基金を通じたお金の提供が「償い」であるという解釈は可能かもしれないけれども、国家による補償という言葉にはもうちょっと狭い語義があるので、「償い=補償」ではありません。

おれはあの議論をみて論者が欧米の動きと同調しているなどとは思わなかったが・・・誤解されていると誤解しているのか?

 いや、夢さんがそう思っていたようだ、と書いているんだけど。

なるほど、できない、わけじゃない。とするとできるけど、有効じゃない、ということか?この有効ってefficientってことか,あるいは、valid、legitimate ってことか? 後者だとすれば、結局できない、ということであり、前者だとすれば、効率が悪いということになるが、それは相互の理解の深まりがあり得るという事実を軽視するものだ。

 あのさ、根本から認識ずれてるって。
 空さんは、「つまり、何万といるかもしれない権利を剥奪された被害者女性を救済する必要は認めるもの、自分のポジショナリティ故にそれはできない、というのである」と書いていたけれども、わたしは「できない」とも「やらない」とも一度も書いていないのね。そこを間違えていることにまず気付いてよ。
 わたしが「有効ではない」と言っているのは、夢さんの「提案」についてであって、日本人が日本軍による被害者以外の被害者を支援することを「有効ではない」などとは一度も言っていません。言っていないことをまるで言ったかのように議論を進めても全く意味がありません。

 で、論者によると、他国の人から「連帯するだけの価値がない」と思われるだろうから、ということだそうである。とすれば、論者の考える他国の人、他国のフェミニストはかなり偏向で冷酷だと言わざる得ない。
 なんとなれば、日本が加害国の故に、日本人のフェミニストは日本の責任と各国の責任を明確にする運動に連帯するだけの価値がない、といって連帯を拒絶し、しかも、韓国米国などの性的奴隷の犠牲者に対する救済をしようともしていない、のだから。

 ここも、何が、どういう理由で、「連帯するだけの価値がない」と思われるか、という部分を空さんが全く理解していないだけ。はっきり文中に書いているので、きちんと読んでからコメントしてください。もし理解できない部分があったら質問していただけたら答えるので、勝手に妄想で埋め合わせないように。

個別でやるべきだという、その個別性がどれくらい個別的なのかは定かではない。

 そこは具体的な議論になり得るポイントで、そういう議論をしたいのであれば次にやってもいいですが、その前段階としてこれまでの無茶苦茶な曲解をなんとかしてください。わたしの主張が何であるかを理解しないうちに、その主張が正しいか正しくないかという議論をしても意味ないでしょうし。

あるいは、日本人は日本人、韓国人は韓国人、アメリカ人はアメリカ人ということなのか?

 どこをどう誤読すればそういうおかしな解釈が可能なのか分からないなー。

立場を逆にしてみよう。
なぜ、アメリカ人のフェミニスト、つまり、韓国日本ベトナムなどの女性の犠牲者に対する加害国のフェミニスト慰安婦問題についての加害国の日本のフェミニストと連帯するのは「有効でない」のか、なぜ、日本のフェミニストはそうした協力の提案に対して連帯するに値しない、と拒絶してしまう、と考えるのか。

 連帯するのが「有効でない」とは一度も書いていない。夢さんによる呼びかけが、むしろ逆に連帯を阻害するものだから批判しているのね。何度言えば分かるんだろうか。

逆の意味とはもちろんこういうことだ。人種を越えて連帯する「女性」というのが引用文の論者の主張であるが、本件に関する当該フェミニストは単に国籍のため、あるいは、時たま加害国に生まれたフェミニスト故に、上記提案のような多くの女性を救おうとする運動には連帯できない、というのだから、「逆」なのである。

 ここで、空さんがわたしの文章だけでなく引用されている別の文章も理解していないことが明らかになりました。
 引用先の文章は(というか引用部について言えば)、「人種を超えて連帯する『女性』」の困難について書かれたものです。人種や階級や国籍やセクシュアリティを無視して「女性」であるというだけで連帯しようとすることは不可能だと書かれている。わたしはそれと全く同じことを言っているのだから、逆のはずがない。

論者は全体として、「言ってない、誤解している」、云々の繰り返しである。

 空さんは全体として、言っていないことをでっちあげて叩いてみせるばかり。「それは言っていない」と指摘する以外に、一体どのように反論しろと言うのか。「自分の主張はそうではなく、こうなんだ」というのも、前回のエントリで結構がんばって書いたはずなんだけどなぁ。
 うーん、どうしたらわたしが何を主張しているのか理解してもらえるんだろうか。意見が異なる人のあいだでも、相手の意見をちゃんと理解することくらい、できていいと思うんだけど。


 ところで nichijo_1 さんのブックマークコメント、誰か意味解読してくれませんか?

2008年01月23日 nichijo_1 従軍慰安婦 従軍慰安婦連行は記録ないのを証言集積.従軍慰安婦は公式記録なくても他者応答重要を訴えるが,ウェブのフェミへの意見封殺は他者応答より公式派.ウェブフェミ言論を無視する公式派フェミが他者応答重要を訴える珍妙さ

 もともとブックマークコメントというのは他人とコミュニケーションを取るためのものではないのかもしれないけど、意味分からなすぎ。
 とりあえず、慰安婦問題についてわたしが日本政府はどういう事実について責任を取るべきだと主張しているのかくらいは、理解していただいていますよね? >nichijo_1 さん