「意味が分からない」って、それはホントに全然分かってないよ
エントリ「『働いたら負け』状態は社会の責任、かもしれない」について id:circled さんがコメントを書いてくださっているのだけれど、どうも「意味が分からない」様子。詳しく説明したところで伝わるかどうか分からないけど、ちょっとやってみる。
努力しても報われないからやる気を無くすのだから、努力をした分だけ見返りを保障してくれる社会をきぼんぬ!!
ってことなんですけど、違うよ!!全然違うよ!!
そもそも何をすれば報われるのか分かっていないのが問題 - circledの日記
いや、そんなこと誰も言ってないですよ。「ブクマコメントにお応え」エントリでは、「問題は実際の見返りより『見返りがある』という期待だ」「保証ではない」と説明しているのに、なんでそういう解釈になるのかな。
努力というのはつまり、時間にせよ労力にせよ、何らかの投資をするわけですよ。どうして投資をするかというと、それは投資したリソース以上のリターンを期待するからでしょう? ところが、多くの人が一斉に「今の世の中、投資してもリターンは期待できないや」と思ったら、社会運営に必要なインセンティヴが不足してしまう。
「努力した分だけ見返りを保証」する必要はないけれど、とりあえず「努力しよう」(時間や労力を投資しよう)と動機を抱くに足るインセンティヴがなければ、多くの人が合理的な判断として「働いたら負け」と思ってしまう。ごく少数の人だけがそうした判断を下しているのであれば「その人がおかしい」で済むかもしれないけど、かなり大規模に、そして特定の社会集団(たとえばある世代)にそれが集中的に起こるのであれば、社会の問題を考えないわけにはいかないです。
そういう話をしてるんですけど。
努力?何それ?意味あんの?それに価値なんてないよ。
(略)
いい加減これだけ苦労したからとか、これだけ頑張ったからとかを価値とか利益に結びつけるのはおかしいってことに気づいた方が良いです。
努力に価値があるなんて言ってないんですけど、なんでこの人の例は「極端に能力が高い人」と「極端に能力が低い人」の両極端だけなんだろう。普通の人が普通に働くインセンティヴを持てるような仕組みが必要だという話をしているのに。
でもってスマートな政府ってなんでしょう?結果を出さないけど時間だけは浪費する間抜けな人間に、とりあえず本人が努力していると言ったことに対しては売上UPの保障を政府がすれば良いとか言うんでしょうか?
スマートな政府とは、結果ではなく機会とインセンティヴを再分配する政府です。市場がうまく機能しているときはそれだけで適切にインセンティヴが配分されますが、個別の状況においてインセンティヴ・メカニズムが市場の失敗によって破綻したり、社会にとって良い結果をもたらさないときーーこの一つの例として、統計型差別の存在を以前挙げましたーー政府が損なわれたインセンティヴを回復するために介入することはアリだと思います。その政府の介入とは「努力に見合った見返りを」というものではなく、たとえば統計型差別の例であれば「人種・性別・年齢などによる差別を一律禁止する法律の制定」がそれです。