ヒラリー・クリントンが国務長官という噂
ここのところ、オバマ政権における閣僚人事の噂がいろいろなところからリークされているけど、その最大のものはやはりヒラリー・クリントン上院議員を国務長官にという話。彼女が適任だと思う人の話を聞いてみると、「女性重視の姿勢を示すため」とか「党内柔和のため」とかばかりで、それは政治的な計算としてはあり得るけど、それは彼女の適性とは違うんじゃないかと。
かろうじてそれらしい主張として、「彼女は世界中百数十カ国にも旅をして、それらの国のリーダーと会ったことがある」という理由もあったけど、それは大統領夫人として写真撮影に居合わせただけ。外交経験にならないじゃん。
オバマが本当に政界の古いあり方を改革するつもりなら、90年代の政治を代表するクリントン人脈の民主党支配を断ち切らなくちゃいけない。クリントン元大統領の側近から優秀な人を何人か引き離して政権に入れるのは良いと思うけど、ここでクリントン議員の政治的影響力延命に手を貸すとあとで必ず痛い目にあうと思うし、そうでなくてもオバマの次にまたクリントン系の人が民主党の主流に復帰してしまう。
選挙における対抗馬から外交経験のある人を選ぶなら、ビル・リチャードソン元州知事を選ぶべき。かれはクリントン政権でエネルギー省長官・国連大使を歴任しているけど、大統領選挙では自分が脱落した後クリントンではなくオバマを支持した。あるいは同じく大統領選挙に立候補し、脱落後にオバマ支持にまわったクリス・ドッド上院議員(外交委員会序列二位)でもいい。女性を是非ということなら、バーバラ・ボクサー上院議員もいいと思う。あるいは共和党のオリンピア・スノウ議員でもいい。これらの人たちは、純粋に経歴と能力から言ってもクリントン議員より適格だと思う。
ところが噂にあがっているのは、クリントンの他にはジョン・ケリー上院議員とリチャード・ホルブルック元国連大使の名前。ケリーじゃインパクトがなさすぎるし、ホルブルックはもしクリントンが大統領に当選していたら真っ先に指名されていたはずのクリントン閥の中心人物の一人。オバマ以降を見越すなら、いま切らないといけない人物だ。
本家ブログでは、財務長官候補として名前があがっているロバート・ルービン、ローレンス・サマーズというクリントン政権の財務長官経験者は駄目だと書いたけど、その理由もやはりかれらが90年代の政治を代表するから。女性の科学者が少ない理由に関するサマーズの失言なんてどうでもいいんだけどさ。
他にも、アイオワ州知事のトム・ヴィルサックを農務長官にとか、ハロルド・フォード元下院議員を商務長官にとかいう声も挙がっていて、そうしてクリントン系の名前ばかりが出てくるのは不思議。もしこのままオバマを中心とした組閣が進めばクリントン・グループの影響力が一気に消滅してしまうとおそれたクリントン側の関係者のリークじゃないかと思う。
とにかく、どこまでそれを押さえてオバマ独自の人選ができるかが、オバマ政権が成功するかどうかだけではなく、オバマ以降の民主党政治にとっても重要になりそう。
クリントン議員は、最高裁判事に指名して政界から外れてもらうのが一番だと思うな。最高裁の地位なら、議員本人にとっては悪い話じゃないし、同時にクリントン・グループの影響を打ち切れる。となるとキャス・サンスティーンは最高裁じゃなくて、教育長官か労働長官にでもなってリバタリアン・パターナリズムをインプリメントするとか。でも教育長官にはコリン・パウエルという噂もあってそれもなかなか魅力的。閣僚人事が発表になって落胆させられるような結果にならなければいいけど。