「小学生でも分かるように説明しろ」と要求するオトナ

id:sakuneko:20060717 さんがブログで

ジェンダーとは?
 性別における全ての概念の差。
 社会的文化的性差だけではなく生物的性差も含める。


ジェンダーフリーとは?
 「男性≠女性」として扱うことである。
 男と女は人としての成り立ちが違うものなので、ジェンダーを認識した上で、お互いに尊重し合い「男性≠女性」として扱うこと。


ジェンダー研究とは?
 「ジェンダーフリーの達成を妨げる問題」と研究者が捉えた事象に対して、問題提起や是正策を提示することである。

 と書かれているのがあまりにもあんまりなので、つい余計だと思いつつ『バックラッシュ!』キャンペーンブログに掲載されているコラムを紹介したのですが、それでも分からなかった様子。

 すみません。上記のコラムを読ませて頂きましたが理解出来ませんでした。どの辺りが勘違いしてるんだろう?
 そこでid:macskaさんにお願いがあります。小学生にでも判るレベルで「ジェンダーとは」「ジェンダーフリーとは」「ジェンダー研究とは」について3行ほどの易しい言葉で説明して頂けませんか?
 (中略)
 「そんな簡単な内容の運動*1じゃないよ!」と仰るのであれば、ジェンダーフリーについて理解を深めるのを辞めたいと思います。

 小学生に説明するならそれなりの説明をするけれど、どうして大の大人(ですよね)が「小学生にでも判るレベル」の説明を要求するのか理解できない。まさか本当に自分は小学生レベルの頭脳の持ち主だと自覚しているわけではないだろうに、この人は一体どうしてこんな態度に出ることができるんだろうか。「小学生でも判るレベルで説明してくれないなら、ジェンダーフリーについて理解を深めるのを辞めるる」だなんて、何を勘違いしているのか判らないけれど甘えるのもいい加減にしろと言いたい。わたしはジェンダーフリー論者ではないし、ジェンダーフリー推進運動なんてやったことないから、普通の大人並に頭をつかって理解しようという意志もない人に媚びて「理解していただく」必要なんてどこにもありません。多少理解力に問題があってもその人なりに本気で理解しようと努力しているならば、その人の理解を手助けしようとわたしだってあれこれ努力するけど、小学生レベルで説明しろってのはハッキリ言うと「自分は頭を使いたくない」ってコトでしょ。そんなの相手にするほどバカらしいことはありません。
 だけど、あのコラムを読んでも全く自分の誤解に気付かない人がいるというのはやはりショック。例えば、コラムにおける「ジェンダー」の説明では一般的な用法として、

人類にとって性別のあり方には生物学的な要素と社会的・文化的な要素が混じり合っていると思われるが、この用法ではそのうち前者を「セックス」、後者を「ジェンダー」と呼ぶ。

 と書いてあり、普通の大人ならこれが「社会的文化的性差だけではなく生物的性差も含める」とは違うということがすぐ分かるはず(ただし、厳密な話をするなら両者は明確に区別できるわけではないというのもまた事実で、セックスとジェンダーの区別はあくまで概念的なものと思っておいて良い)。また、「ジェンダーフリー」についてはコラムで、

男性、女性と一口にいっても多様なライフスタイルがあるのだから、それらを肯定していくという意味合いで使っている

 と書いており、「『男性≠女性』として扱うことである」という理解とは明らかに違う。不等号を使うならば、「ある男性≠別の男性」「ある女性≠別の女性」に近い。しかし「コラムを読んだけれど理解できない、どのあたりが勘違いなのだろう」というのは、ちょっと信じられない反応だ。というか、驚愕ですよこれは。もし「読んだ」というのが本当なら(わたしはかなり疑っています)、小学生レベル以下じゃないだろうか。なんだか恐ろしいモノを見た気分。
 「ジェンダー研究」についてはコラムに書かれていないけれど、ジェンダーフリーなんて1995年あたりにはじまる比較的新しい概念で、しかも日本ローカルなのよ。「ジェンダー研究」はそれよりずっと前から世界中で行われているんだから、普通に考えれば「ジェンダー研究」がジェンダーフリー実現のためのものであるはずがないじゃん。
 わたしが説明してもこの人に理解できるはずはないけれど他の読者のために説明すると、ジェンダー研究というのにはいろいろあって、その代表的な狙いの1つがジェンダーそのものがさまざまな社会において、あるいは過去の歴史においてどのように構築されているか探るというもの。もう1つの重要な目的は、これまで「客観的」とされてきた学術的な研究が、実は男性の視点や異性愛者の視点に偏っていたものであったことなどを明らかにすることで、より多様な視点を含めるようにこれまでの学問をリファインすること。ジェンダー研究と女性学では重なるところがあるけれど同じではないし、それと政治的な運動であるジェンダーフリーフェミニズムとはまた違う(ジェンダーフリーフェミニズムももちろん違う)。
 これって、この人にどれくらい伝わるのかな。

子供に「ジェンダーフリーってなあに?」と聞かれても説明に困りたくないのものですね。

 それが本気なら、困らないような努力くらいしたらどうですか?