当たり前の検証すらせずに「事実誤認だ」と批判する愚

 bruckner05 さんが『バックラッシュ!』掲載のわたしの論文の内容(のごく一部)を批判する記事を書いています


 ポイントとしては3つだけ。


 まず第一に、新井氏の文献が一部の論者によって曲解されて利用されているかどうかは、新井氏の文献に基づいて論証してください。というのも、わたしの指摘は「ジェンダーフリー反対派の保守論客は新井氏の主張を曲解して引用することがある」というものなので、当の保守論客の一人である高橋史朗氏が「新井氏はこう言っていた」と引用している文章を提示されても、それは高橋氏も新井氏の発言を曲解して引用しているだけかもしれないからです。つまり、ちっとも反証になりません。
 それに、わたしは八木氏らが引用している新井氏の文献に当たってそれが曲解であることを示したわけで、新井氏の全ての発言をフォローなんてしていません。ましてやかれがどこかで何と言ったというような伝聞までフォローしきれるはずがありません。したがって、わたしの指摘が間違いだというのであれば、八木氏らの引用が正確であることを、八木氏らが引用した文献を使って行ってください。


 第二に、『新子育て支援〜未来を育てる基本のき』に関するわたしの記述は、世界日報の記者でもある山本彰氏の批判に反論するかたちで書かれています。そして、山本氏は『基本のき』は「日本で3月3日に祝われる雛祭りについて『女の子たちが女性としての自覚を育むから』という理由で不適切な慣習だと決めつけている」という点で批判しているわけですね。それに対し、それは曲解であるとわたしは反論しています。
 つまり、わたしはパンフレットの中の一カ所だけの記述に関する批判について反論しているのであって、パンフレット全体を批評しているわけではありません。仮に高橋氏による新井氏の反応の描写が事実の通りであったとしても(後述の理由により、ありえないと思っていますが)、かれはパンフの中の全く別の場所を問題としている可能性があるのですから、それだけで新井氏がわたしと違う意見を持っているということにはなりません。


 第三に、bruckner05 さんが『基本のき』をサイトに掲載していますから、読者のみなさんも実際に読んでみてください。その内容には賛否両論あるでしょうし、わたしにとっても行政パンフにありがちな押し付けがましさがプンプンするのでなんとなくイヤな気にさせられます。しかし、

どういう意味かといいますと、この男らしさ女らしさを押し付けていると批判しているジェンダーフリーを主張する人達はですね、「男らしさとか女らしさというのは親が後から躾てそうやって仕組んだんだ」と「後からつくったものだ」と言うんです。

 というような内容は、一切書かれていません。どう見ても曲解です。もし bruckner05 さんが「嘘だ書かれている」というなら、他人がパンフのことをどう言っているとかじゃなくて,パンフ自体から直接引用してください。それができないならば、文字として印刷されているパンフの内容すら正確に引用できない高橋氏が、一度聞いただけの発言を正しく引用しているなどとは夢にも思わないことです。
 また、bruckner05 さんが書いた

「基本のき」パンフは妊娠や出産等を除く大半の性差を完膚無きまでに否定しており、そのことは同パンフの解説を読んでいけば誰の目にも明らかである。

 というのも間違い。そんなことはどこにも書いていません。
 この点は第一のポイントとも共通したテーマがありますね。そう、bruckner05 さんは元の記事にあたってそこから検証するという当たり前のことをせずに、どこからどう見てもバイアスのかかった記事だけを根拠にわたしの論文が間違いであるとイチャモンをつけているのです。取りあえず今回は一度批判を撤回して、よく考えてから再度批判を試みてはいかがでしょうか。
 以上。