初のトランスジェンダー議員を目指す医師のおかしな話

 9月2日付けの Washington Post に、メリーランド州議会選挙に出ている Dana Beyer さんについての記事「Hoping Md. Is 'Ready for a Person Like Me'」が掲載されている。 Beyer さんは現在54歳で、数年前に男性から女性にトランジションしている。もし当選すれば、トランスジェンダーであることを公表して当選するはじめての政治家になるらしい。その記事中にこんな記述が。

Beyer was raised mostly in Queens, N.Y., the first of two children born to a Conservative Jewish family. She said she was born intersex, her gender identity confused by conflicting genitalia, a condition she ascribes to the drug DES, which was prescribed to her mother during pregnancy. Puberty plunged her body into hormonal civil war.

 母親が妊娠中に摂取した DES という薬の影響で、標準とは違った性器を持って生まれたために性自認が不安定になった、とのこと。
 この点については、3年前に同じ Washington Post に掲載された Beyer さんのインタビュー記事「Pondering the Possible Connection Between DES and Mixed Gender Identity」(09/23/2003) により詳しく載っている。

Beyer, now known as Dana, said she knew from age 7 that she was a girl trapped in a boy's body. Her first and only menstrual period, at 12, confirmed that belief: While her reproductive organs appeared male, inside she had some female reproductive characteristics, she said. A doctor later told Beyer she had abnormalities consistent with a vestigial uterus. Beyer believes there is only one likely cause for the sexual anomalies that plagued her most of her life: DES.

 これによると、Beyer さんは12歳でたった一度だけ生理があり、さらに彼女の身体には「子宮の痕跡」(vestigial uterus) がある。それが自分が身体的にインターセックスだという証拠であり、その原因は DES であるということらしい。
 でも、これらはまったくのデタラメ。まず、DES によって性器に異常が生じる可能性があることは女児において確認されているけれど、男児については大規模な調査できっぱりと否定されている。また、「子宮の痕跡」とは要するに胎児が性分化する際に女児ならば子宮となるはずが男児においては発達しなかった部分のことであり、全ての生殖学的男性が共有するものなのでインターセックスの症状ではない。最後に、「子宮の痕跡」で生理が起きるわけがなく、ウソでなければ何かの勘違い。
 てゆーか、記事をよく読むと Beyer さんには最初の妻とのあいだで「2人の息子がいる」らしいけど、どう考えても言ってることがオカシイ。元医師なのに。
 そんな困った人でも、とにかく「トランスジェンダーの政治家が当選する」のは悪いことじゃないんだけど、なんだかなぁ。