専業主婦に関するデータのおかしな読み方

 本家ブログで bruckner05 氏の女流棋士会についてのエントリを取り上げたが、ついでに同氏の「男は仕事、女は家庭」、専業主婦というエントリで引用されている記事についていくつかコメント。
 まず、Wikipedia の「専業主婦」項目から。

 現在の日本では「30代・専業主婦」が最も幸せな日本人像であるという調査結果があり(2005年11月30日)、また25-35歳の比較的若い専業主婦の4人に3人が生活に満足しているという調査結果もある(逆に有職者は「満足」が2人に1人にとどまっている)(2006年7月25日)。
 また近年、米国および日本おいては「専業主婦志向」の女性が増加傾向にあり、結婚後の専業主婦家庭の購買力が、今後も引き続き平日営業のスーパー・百貨店・飲食店等の「売上」および「安定雇用」を生み出すことが産業・商業界から期待されている。

 前段については、世帯収入という要素をコントロールした調査なのかどうかが気になるところ。専業主婦になるという選択肢は経済的にある程度の余裕がなければあり得ないので、専業主婦になったから満足なのではなく、もとから経済的に余裕があって生活に満足する傾向のある人が専業主婦になっているという可能性が高い。普通、共働きしている家庭において一人が仕事を辞めて家事に専念すれば収入が大幅に減るわけだけれど、そうした経済的余裕の消失を相殺できるほど幸福度が上がるかどうかは、この調査からは分からないのでは。
 後段はまったく意味不明。賃金労働できるはずの人が専業主婦になれば収入は確実に減るはずで、従って購買力は下がるはず。また、専業主婦が家事を担当すれば、飲食店の収入は減ると見るのが当然。専業主婦がいる家庭の購買力が大きいというのは事実だろうけれど、それは専業主婦になったから購買力が上昇するのではなく、購買力のある層が専業主婦になることができるから。仮に「専業主婦志向」が広まって、それほど経済的に余裕のない人まで専業主婦になった場合、生活費を切り詰めることになるのでスーパー・百貨店などの売り上げは減少する。


 つづいて、世界日報の記事。

■共働きより仕事辞める/理想の子育て環境〜厚労省調査(06.12.26)
 幼い子供がいれば夫婦の一方が仕事を辞め子育てに専念すべきだと考える人は、男性の39・0%、女性の27・3%に上り、「共働き」を選ぶ人より多いことが25日、理想の子育て環境などに関する厚生労働省の調査で分かった。
 調査は2004年7月に実施。無作為抽出で20−59歳の男女6967人(有効回答は6470人)から回答を得た。
 理想の子育てと働き方は「夫婦の一方が仕事を辞め子育てを主に担当する」が、「共働きだが一方が短時間勤務などする」(男性16・3%、女性20・8%)や「共働きで保育所に預ける」(男性16・1%、女性17・4%)より多かった。
(以下略)

 この調査の数字を信じるとすると、「夫婦の一方が仕事を辞めて子育てに専念すべき」と考える人は男性の39.0%、女性の27.3%。それに対し、なんらかの形で共働きを続けるべきだと考える人(「一方が勤務時間を減らす」と「保育所に預ける」の合計)は、男性32.4%、女性38.2%。仮に男女比を1:1とすると全体では「仕事を辞めて子育てに専念」が33.15%、「共働き」が35.3%となる。
 この通り、明らかに「仕事を辞める」よりも「共働き」の方が多いのに、「夫婦の一方が仕事を辞め子育てに専念すべきだと考える人は〜『共働き』を選ぶ人より多い」ことが分かった、とするのは間違いでは。