性犯罪者への「絶対終身刑」を主張する某団体への返事

 「性暴力情報センター」という、日本でまだインターネットに一般ユーザがほとんどいなかった時代に作った(そしてここ何年も全く更新していない)サイトを持っているせいで、たまにこんなメールが届く(固有名詞は削除)。

今日、異常な蔓延化と低年齢化している性犯罪について、少しでも未然に抑制するよう、少しでも被害者の力になれるよう、性犯罪、特に強姦罪に対しての厳罰化を掲げる団体、*****を設立致しました。
 当団体の目標とするところは性犯罪の厳罰化にあります。内容は加害者への絶対終身刑の適用です。被害者への贖罪、加害者の出所による被害者の恐怖の排除、また、犯罪防止の抑止力として、絶対終身刑を目標としております。
 政治的活動も視野に入れておりますが、第一歩として、8月には広く社会に訴えると共に支援者・理解者獲得の為の講演会を予定しております。
 設立間もない当団体としましては、この問題に対して共通の意識をお持ちである理解者及び識者の方を広く求めております。
是非ともご協力いただければと、ご連絡させて頂いた次第です。

 これへの返事。

こんにちは、「性暴力情報センター」サイト管理者です。
 性犯罪の被害を受けた人やその周囲の人たちが、加害者に対して大きな怒りや憎しみを感じるのは当然です。そして、それだけの苦しみを与えておきながら、証拠不十分などで加害者が何の裁きも受けなかったり、受けてもごくわずかな刑罰しか受けない場合に感じる理不尽さには、言葉で言い尽くせないものがあります。
 しかし、暴力をさらに強大な暴力のみによって封じ込める考え方には到底賛同できません。また、本気で性犯罪の抑止を考えるならば、あなた方が主張するような極端な厳罰化が有効な施策であるとも思えません。そもそも、性犯罪の抑止に何が有効であるか、少しくらいは既存の学術研究を調べた上での活動なのか、疑問に思います。
 あなた方の提案する考え方は、剥き出しのサディスティックな暴力性と残虐性の露出に「犯罪被害者のため」「犯罪抑止のため」という一見もっともな口実を付けただけのものにしか見えません。正義をかかげて自己陶酔に陥るだけ、単にサディスティックで暴力的な性犯罪者以上に社会的に害悪であるとすら思います。
 もし*****さんが、本当に性犯罪を抑止し、また既に被害を受けた人たちのためになる活動をしたいとお考えでしたら、団体の趣旨を再考するよう求めます。そのうえでということなら協力も考えますが、現時点では、これまで性暴力の問題に真摯に関わってきた人間の一人として、あなた方の掲げる目標には反対であると表明させていただきます。

 いまのところ反応なし。
 ちなみにこの団体はまだウェブサイトを持っておらず、mixiにコミュニティを作っている様子。