それよかロムニー vs. ハカビー代理論争やろうよー

 苺畑カカシさんから、反論されちゃいました。人のこと言えないけど、ペース早いよねー。

問題はmacskaさん個人のし好ではなく、macskaさんが支持している左翼フェミニスト運動なのだから。
http://biglizards.net/strawberryblog/archives/2008/01/post_624.html

 だったら、わたしが左翼の一員だとか、わたしが左翼フェミニスト運動を支持しているとか、知りもしないでいい加減なことを書かないでくださいね。

私のいうレズビアンフェミニストとはそういう部類の人々のことだ。私にはレズビアンの友達がいるのでこの件については一応知ってるつもり。知らないで適当な言葉使いをしたわけではないのであしからず。

 そうでしたか、それは失礼しました。
 しかし、だとするとわたしはそういうレズビアンフェミニストと根本的に対立する立場にあるので、わたしがかれらの同類であるとしたあなたの推測は大外れということになります。

現在のフェミニストたちが自分たちのことを「私はジェンダーフェミニストではない、エクイティフェミニストだ。」と主張したがるのは、左翼が自分を左翼と認めたがらないのと全く同じ理由だ。単純にジェンダーフェミニストとかジェンダーフリーといった概念がその本質を理解されるにつれ一般市民から見放されてしまったことを彼女たちは承知しているからだ。

 いやそうじゃなくて、「エクイティフェミニズム」「ジェンダーフェミニズム」という分類自体が、前者が良くて後者は悪いということを決めつけるためにできたものであり、実在するどのフェミニストにもまったく当てはまらないくらいに「ジェンダーフェミニズム」が醜悪に描写されているから、その二分法をつきつけて「お前はどっちだ」と聞くことが無意味になっているだけ。
 実在すらしない仮想敵をでっちあげて叩くという非生産的なお遊びはやめてほしいなぁ。例えばアファーマティブアクションならアファーマティブアクションで賛成論にも反対論にもそれぞれ言い分があって、またその理由や論拠もまちまちで、どちらか一方を悪魔の化身であるかのように決めつけるのはくだらないだけ。それこそ、全体主義的な政治手法でしょ。

本当のエクイティフェミニストかどうかを確かめる方法は簡単だ。

  • 質問1:大学などの理数学部で女子生徒や女性教授の数が男性に比べて極端に少ないことは、応募者数に関係なく男女差別なので女性の数を増やすべきであると思うか?
  • 質問2:歴史的に迫害されてきた少数民族や女子に公平な機会を与る目的でつくられた、これらの人々への特別考慮をするアファーマティブアクションを支持するか?
  • 質問3:タイトル9によって、学校内で男女同じように運動部が設けられその活躍や規模に関係なく同じ予算をあてがわれなければならないという法律を支持するか?

もしこれらの質問にすべてイエスと答えれば、ジェンダーフェミニストだし、ノーと答えればエクイティフェミニストだということになる。

 イエスかノーかと迫る時点で、既におかしいのよ。例えばある学部で女性が少ないだけで差別があるとは言えないけれども、かといって人数の違いは生まれつきの特性の差であって差別は存在しないと決めつけるのもおかしいでしょ。具体的に調査を行なうなり当事者の生の声を聞くなどして、差別の問題があれば対処していくべきじゃん。
 あるいはアファーマティブアクションだって、必要な場合もあれば不必要な場合もあるだろうし、必要だとしてもさまざまなやり方があるわけ。例えばブッシュ大統領はいわゆるクォータ制やポイント制には反対だけれど、テキサス州知事時代には「どの公立高校であってもトップ10%に入る生徒には州立大学への入学を認める」という措置を実施していて、実質的にこれは貧困などの理由で全体的に成績が低い地域の学校に通う、その中では比較的優秀な生徒を救済しているわけ。

先ずクリントン大統領のセクハラ問題を「疑惑」とか「保守系メディアで繰り返し宣伝されたデマ」などというところからして、macskaさんのバイアスが完全にばれてるわけだが、

 クリントン大統領のセクハラについては、裁判でセクハラがあったと認定されたわけでもないのに事実だと決めつけるのはおかしいでしょ。実際、裁判では原告の訴えは棄却されたわけだけど、その理由は「仮に原告の主張が全て事実だったとしても、法律上セクハラの定義には相当しない」こと。つまり裁判では、明白にセクハラは否定されている。
 それから「保守系メディアで繰り返し宣伝されたデマ」というのは、セクハラについての記述ではなくて、「クリントンのセクハラ疑惑に際して、National Organization for Women が原告を批判した」という記述がデマだと言っているのでお間違えなく。裁判になっていない件もある可能性があるし、わたしはセクハラ自体がデマだったとは言っていない。

NOWの会長のパトリシア・アイルランドは、右翼がこの事件を利用してクリントンを陥れようとしているとし、ポーラ・ジョーンズはその手先であるかのような声明文を出している。

 右翼がどのように関わっていたのか知らない人が多いと思うので説明しておくと、ジョーンズの件を最初に報道したのは、大富豪リチャード・メロン・スケイフがクリントン政権潰しのための「アーカンソー・プロジェクト」に巨額の私費を投じてウソだらけのスキャンダル特集を毎号のように組ませていた American Spectator という保守政治雑誌の記事で、書いたのはそのスケイフから指示を受けて執筆していた保守系ジャーナリストの David Brock という人。
 ところがこの Brock という人はゲイであることを隠して活動していた人物で、保守運動内部でゲイであることがばれて排除されたのをきっかけにリベラルに転向、『ネオコンの陰謀 アメリカ右翼のメディア操作』という本でアーカンソー・プロジェクトの詳細を暴露している。それを読めば分かる通り、「右翼がセクハラ疑惑を利用してクリントンを陥れようとしていた」のは疑いようのない事実で、ちょっと政治に詳しい人なら誰でも知っていたこと。
 ただし、カカシさんが紹介している声明文のどこを読んでも、ジョーンズを非難するような内容は書かれていない。カカシさんは、NOW の声明文からの引用として、

ジョーンズさんの信用度がこうした関係によって自動的に失われるとは言わないが、右翼指導者たちとのかかわりは彼女の訴えを不誠実なものにしていると考える。

 と書いているけれども、これは訳がおかしい。原文は「Although we do not think Ms. Jones' credibility is automatically damaged by these associations, we do find the involvement of right wing leaders in her case disingenuous. 」だから、正しく訳すと、

わたしたちはジョーンズさんの信用度がこうした関係によって自動的に傷つくとは考えないが、彼女の訴えにおける右翼指導者たちの関与は不誠実であると考える。

 声明文は、これまでセクハラ問題について何ら取り組もうとしてこなかったばかりか、被害者を黙らせるようなことばかりしてきた右翼指導者が、突然ジョーンズの件に限って被害者の側として関与してきたのは不誠実だと批判している。不誠実だとされているのは右翼指導者たちであるのに、わざとらしい誤訳によって女性団体が「ジョーンズの訴え」を批判しているかのように見せかけるトリックは、それこそ不誠実だと思うな。

これは私がNOWがタリバン批判を「全くしていない」と書いたことへの反論だが、私はNOWがタリバンイスラム教の女性迫害を一度も批判したことがないと言う意味で書いたのではない。ブッシュ政権イスラム教テロリストに戦いを挑んで以来全く批判が聞かれなくなったという意味で書いたのだ。
(中略)
アフガニスタン戦争やイラク戦争がNOWによって取り上げられる場合は、常にこれらの戦争によって状況はかえって悪くなった、もしくはタリバンを倒した後でも女性の立場は良くなっていない、といった批判でしかない。

 あのさ、もしかしてカカシさんは、ブッシュが戦いを挑んだ2ヶ月後にはタリバン政権が崩壊したことを忘れてない? タリバン政権が打倒されたあと、これまでのタリバン批判にかわって「タリバンを倒した後でも女性の立場は良くなっていない」という批判がでてきたことは、ごく当たり前のことじゃない? タリバンが倒されて、その後タリバン以外の問題が持ち上がっているのに、相も変わらずタリバン批判ばかりやってたら、その方が絶対ヘンだよ。

名誉殺人という行為自体は糾弾してもおよそイスラム原理教批判などにはなっていない。それどころかイスラム教批判を必死に避けているのだ。

 あのー、だからなんでフェミニストイスラム教を批判しなくちゃいけないんですか?
 キリスト教についてだって、キリスト教の教義を口実に女性の権利を侵害するような個別の行為については批判したとしても、キリスト教自体が問題であるとか言い出したらおかしいでしょ。同様に、イスラム教だって女性の権利を侵害するような個別の行為を批判することはあっても、イスラム教自体を批判する必要なんてどこにもないのでは。

左翼フェミニストにかかっては、何もかもが政治に関連付けられてしまうという典型的な発言である。macskaさんはいわゆる"the personal is political"という左翼のモットーに従っていると言える。

 わたしはそのモットーに反対の立場なんですけど。
 もういいや、この人は「自分と意見が対立する人は左翼でマルクス主義ジェンダーフェミニスト」と勝手に決めつけて、それに反する事実は全部無視しちゃう人なんだから、どうしようもないしー。

macskaさんがクリスティーナ・ホフ・ソマーズ女史が保守派である証拠として、保守派シンクタンクから支援金をもらっているという話を書いておられる。直接ブログのほうにコメントを残そうとしたのだがうまくいかなのでこちらで答えておこう。

保守派から支援金をもらったからといって、調査者自身が保守派であるという証拠にはならない。彼女の調査がたまたま保守派に気に入られたというだけの話である。macskaさんはホフ・ソマーズの著書を読んでいれば彼女が保守派であることは明白だおっしゃるが、私の読む限りそのような印象は受けない。

 ソマーズの著書を読んだ人100人に聞いたら、最低でも90人までは「保守派だ」と答えるでしょう。
 それが分からないのが、あなたの判断基準がそれほど狂っているという証拠。

それでもホフ・ソマーズが極右の保守派だといいはるのであれば、移民、人工中絶の合法性、健康保険、対テロ戦争、銃砲取り締まりなど保守派にとって非常に大切な事柄について彼女がどういう見解を示しているのか是非その情報源を添えた上で提示していただきたいものだ。

 直接メールでもして聞いてみてはいかがでしょうか。情報源が手元にないので断言はできないけど、少なくとも移民、健康保険、対テロ戦争、銃規制に関してはだいたい保守の側に立つはず。ただソマーズは保守派とはいっても宗教右派ではないので、中絶の権利には根本的には反対しなかったと思う。

ところで『学問的には左翼よりむしろ保守の主張する「減税、小さな政府」の側をリベラルと呼ぶ伝統がある』というのは19世紀の話だ。20世紀のリベラリズムを「減税、小さな政府」などと定義つけるひとはアカデミックでも存在しないだろう。

 えー、政治学でも法学でも経済学でも、「リベラル=小さな政府」はごく普通の用法なんですけど。