クリントンを支持する狂信フェミニストのその後

 本家エントリ『オバマを支援する麻薬ギャング vs. クリントンを支持する狂信フェミニスト』で取り上げたクリントン支持派のフェミニストと1ヶ月振りに再会した。
 彼女は政治をちゃんと分かっているので、クリントンの敗北は残念だと思いつつ、オバマ憎しの感情から共和党のマケインを支持するようなことはなかったのだけれど、いまだに「民主党全国委員会はクリントンが女性だからとはじめから信用していなかった」とか「総得票ではクリントンが勝っていた」みたいに言っていた。
 でも実際に選挙がはじまってオバマが勝利を重ねるまでは、民主党全国委員会を含めた民主党の政治のプロはみんなクリントン支持者だったし、「クリントンの勝利は誰にも止められない」「オバマは一勝もできずに惨敗するだろう」という意見が当たり前のようにメディアをにぎわせていた。オバマを内心で支持していた特別代議員たちすら、それを表明してあとで大統領となったクリントンに報復されるのを恐れて、オバマの勝利が確定するまでは黙っていたくらいだ。
 総得票云々についてはさらにおかしい。まず第一に、それはミシガン・フロリダ両州の票をそのままカウントした場合の話だけれど、フロリダでは主要候補のうちクリントンだけが選挙運動をやり、ミシガンではクリントンの名前だけしか投票用紙になかったのだから、クリントンがたくさん得票して当たり前。両州は党の規則に違反して投票日を前倒ししたため選挙結果は受け入れられないことになり、ほかの候補はみなそれを尊重して選挙運動をしなかった。クリントンの方が総得票が多かったという主張は、ミシガンでオバマの得票がゼロだったというあり得ない前提に基づいている。
 第二に、投票ではなく州党大会によって代議員を選出する州がたくさんあり、そのほとんどでオバマが勝っているのだけれど、それらの州は総得票のカウントには含まれていない。支持者の割合は分かるのでそれを元に概算した票数を含めた場合、クリントンの方が総得票が多かったという主張は崩れる。
 第三に、選挙戦略の違いがある。クリントンは「勝った州の数」でも「獲得代議員数」でもオバマに負けるのが濃厚になった時点で、とにかく得票数だけでも自分が勝ったと言えることを狙った戦略を取った。そのためには、自分の支持者を増やすよりも、オバマの支持者を減らし投票に来させない方が有効であり、最後の数週間クリントンは人々の人種差別的な感情を徹底的に利用する戦術に出た。
 一方オバマは、2月の終わりから11連勝した時点でほぼ党指名を確実にしたので、指名獲得後の党内柔和を優先させてクリントンへの批判を控え、共和党のマケインに批判を集中させる戦略を取った。ミシガン州をどうするかを議論した委員会では、クリントンオバマで半分ずつ代議員を分け合う案を委員の過半数が支持したのに、あえてクリントンの取り分が増えるような案を主張して、「本当はクリントンが勝っていたのに、オバマによって代議員数を奪われた」という批判を封じ込めようとした。
 クリントン支持者は、3月以降に限っていえばクリントンの方が勝っていたと言うけれども、それは両者の選挙戦略の違いに原因がある。マケインとの本選に向けて党内柔和を最優先とするオバマは、クリントンからのなりふり構わない攻撃を無抵抗に受け流すしかなかったわけだから。
 それでも、クリントンが撤退を表明するまでの時点であれば、「クリントンの方が総得票数では勝っていた」という主張は理解できなくもない。自分が支持する候補にとって都合の良い情報に注目したがるのは当たり前だもの。でも、クリントンオバマの闘いは終わったはずなのに、いまだに「総得票数では勝っていた」というファンタジーにすがりつくのは、どうにかならないだろうか。贔屓目で見るのもいいけど、それが贔屓であることくらいは自覚してほしいところ。