お笑い「Y染色体」論

天皇は男系でなければいけないという「Y染色体」論、ちょっと前から目についていたんだけれど国会議員まで(日本会議国会議員懇談会だけど)マトモに相手にしてたんですねー。


産経新聞 11/30 「皇室典範改正勉強会 『Y染色体』の重要性指摘 男子皇族、代々受け継ぐより

超党派保守系議員でつくる日本会議国会議員懇談会平沼赳夫会長)は二十九日、国会内で皇室典範改正問題に関する第二回勉強会を開いた。この中で、父方の系統に天皇を持つ「男系」による皇位継承の重要性について、遺伝学の立場から説明する際に用いられる「Y染色体」理論をどう考えるべきかが取り上げられた。「男系でなければ血を継承できない」(八木秀次・高崎経済大助教授)一つの根拠とされる「Y染色体」とは何なのか。専門家の話を交えて検証した。

わたし個人は天皇の地位がどうなろうと構わないんですけど、男系維持という立場は「遺伝学の立場から」説明されなきゃいけないんでしょうか? あれだけジョン・マネー似非科学を批判してたくせに。

「男系の意味をどう理解するか。Y染色体で説明すれば国民の理解は進むのではないか」(自民党石田真敏衆院議員)
「女性の立場からすると、Y染色体論はむしろ分かりにくい」(同党の稲田朋美衆院議員)

そんな事で理解が進んだりしませんって。女性の立場じゃなくて、理屈が変だから分からないのです。女性はY染色体を持たないから理解できないとか、そんな事言い出すんじゃないでしょうね?

この日の勉強会では「Y染色体」をめぐって意見が割れ、講師の大原康男国学院大教授が「それよりも男系で二千年間継続してきた重み、事実を考えなければならない」と引き取った。「Y染色体」については、「皇室が成し遂げているのは千数百年にもわたり、ほとんど同じ『Y』を受け継いだということ。われわれが直面しているのは、千数百年もの間純粋に受け継がれてきた『Y』を、いま絶えさせていいのかという問題だ」(動物行動学研究家の竹内久美子氏)など、重要性を指摘する向きもある。ただ、一般にはまだなじみが薄い。

大原さんの考え方の方がよっぽどマトモ。もしわたしが男系論者なら、確実にそっちに同調しますね。2000年続いてるってのはいくらなんでもデタラメだと思うけど。竹内さんの考えは押し進めれば「天皇ヴィークル論」になるのでそれはそれで面白いんですが(Y染色体尊いのであって、生身の天皇はそのヴィークルとしての価値しかない!みたいな)、そこまで行くことはないような。ただ、男系が続いた年月については竹内さんの方が事実に近い。

専門家はどう見ているのか。同志社大ITEC(技術・企業・国際競争力研究センター)の蔵琢也研究員(進化生物学)によると、女子のXX型は遺伝子が混じり合うため、世代ごとに祖先の遺伝子が薄まっていくが、男子のXY型はY染色体が親から子へと完全な形で伝わる。

遺伝子が「薄まっていく」とはなんと非科学的な言い方。本当にこれ進化生物学を研究している人ですか?


Y染色体も内部でたまに遺伝子の入れ替えを行っているんだけど、それはいいとします。でも、遺伝子が混じり合うというのは偶発的な理由で染色体の一部が破損しても交わる相手の染色体に補完してもらえるための修復の仕組みで、その機能を持たないY染色体は壊れた部分がそのまま子孫に伝わってしまうのね。Y染色体がX染色体に比べてずっと小さいのもそれが理由で、長い時間のあいだ壊れ続けてもともとあった遺伝子のほとんどを失ってしまったのが現在のY染色体(このせいで、このままいくと何千万年か先には人類から別の種族が枝分かれするかもしれない、みたいに言う人もいるみたいです)。それが素晴らしいことなんですか?(というのはちょっとレトリックが過ぎました。いくらY染色体がどんどん壊れてきているといっても、千年二千年程度の時間でそんなに簡単に壊れたりはしません。が、それはその程度の伝統など大したことではないという意味でもあります。)

このため、蔵氏は「血のつながりとは、科学的に言えば遺伝子の共有率だ。男子皇族だけに代々受け継がれてきたY染色体は姓や家紋に似ているといえる。しかし、体の細胞に刻印されているという意味で、はるかに強い実体をもつ」と説明。さらに「皇室には、(初代)神武天皇以来、Y染色体という刻印が連綿と受け継がれてきた。国民や世界の人々はそれでこそ皇室の中に二千年の歴史の重みを感じる。女系相続は、過去と現在の遺伝的なつながりを断ち切るという意味で間違いだ」と話している。

神武天皇以来って、マジですか? 神話の世界の話と科学の話を混ぜないで欲しいなぁ。それに、どうしても過去との繋がりと言うなら、女系遺伝するミトコンドリアじゃ駄目ですか?