性犯罪者情報登録制度の真の目的

 今日付けの The New York Times 記事「Homelessness Could Mean Life in Prison for Offender」(08/03/2007) を読む。報道によれば、米国で一番厳しいとされるジョージア州の新しい性犯罪者情報登録制度によって、子どもに対する性犯罪による刑期を終えて出所した元受刑者が、合法的に住むことができる住居を見つけられないために再び刑務所に送られようとしている。
 この法律によれば、性犯罪を犯した人は出所後の住所の登録を義務づけられ監視されるだけでなく、最寄りの学校・介護施設・教会・プール及び通学バスの停車する場所から1000フィート(約300メートル)以内に住むことを禁じられる。収監前にもともと住んでいた住居であっても例外とはならないし、既に住んでいる住居の近くに新たにこれらの施設が設置された場合も立ち退かなければならない。
 結果として多くの元受刑者がホームレスになり住所を登録できないため、ジョージア州では1年前にこの法律が作られて以来、少なくとも15人の元受刑者がホームレスであることを理由に逮捕された。住所登録義務違反で二度目に有罪になると、自動的に終身刑になる。で、現在その状態にある元受刑囚の一人が州を相手取って裁判を起こしているところ。
 ジョージア州法は住所登録しないと終身刑になるというところや近くに住んではいけない施設の種類が多い点で極端だけれど、元受刑者が住むことができる地域を制限する法律は実は他の州にも存在する。記事の中でも、フロリダ州はある「橋の下」をホームレスの元受刑者の登録上の住所として認めたとか、アイオワ州ではフリーウェイのレストエリアを住所として登録している元受刑者がいるという。
 以前も書いた通り、性犯罪者の情報を登録して公開する制度の名目上の目的は、性犯罪の前科のある人の情報をコミュニティが共有することで子ども(やその他の人々)に対する被害を防ぐというものだった。つまり、刑期を終えるなり仮釈放されるなりして出所してくる人々との共生を前提としたうえで、リスクを減らすための方法として提案されているはず。しかし実態は、記事の中で紹介されている通り、ジョージア州法の支持者はこうした法律が「性犯罪者を州外に追い出す」ためのものだと認識している。州外に逃げ出してしまえば元受刑者の捕捉が困難になり、地下に潜るのが明らかなのにね。
 ご存知の通り、わたしは性犯罪者情報公開制度に反対の立場から過去にいろいろ書いてきたけれども、もし仮に社会やコミュニティが「前科のある人たちと共生する」という合意を成立させることができるのであれば、そういった制度に必ずしも反対するわけではない。けれども、現実には前科のある人たちから住居や職を奪い、排除し、貧困やホームレスであることを理由に刑務所に入れてしまえという考え方が大きな支持を集める中で、そうした制度を導入するのは危険すぎると思う。