イングランド人とアイルランド人は遺伝子的にほぼ同一らしい

 ちょっと前に The New York Times に「English, Irish, Scots: They're All One, Genes Suggest」(March 5, 2007) という、欧米的には衝撃的な記事が掲載されたのだけれど、日本であまり紹介されていない様子。ちょっとまえの記事だけど要約してみる。
 記事はオックスフォード大学の遺伝学者 Stephen Oppenheimer 氏の研究について。Oppenheimer 氏には「The Origins of the British: A Genetic Detective Story」という本もある。かれの調査によれば、アイルランド人・スコットランド人・ウェールズ人およびイングランド人の各民族は遺伝子的にはほぼ同一であるという。これまでアイルランド人はケルト系、イングランド人はアングロサクソン系とされてきたが、ケルト民族およびアングロサクソン民族の流入によりもたらされた遺伝子はいまのアイルランド人やイングランド人の遺伝子の5%にも満たない。
 欧米的にこれがショックなのは、イングランドによるアイルランドの過酷な支配とそれに対する抵抗の歴史が、今にも続くテロリズムの多発や、それへの対処という名目による監視社会化というかたちで現在の社会にも大きな影響を与えているから。
 もちろん「民族」は生物学的な概念ではないから、遺伝子的に区別が付かない集団が別の民族に分かれても不思議はない。だけど、アイルランド人に偏見を持つイングランド人や、イングランド人に敵意を持つアイルランド人が聞いたら嫌がりそうだ。
 でも日本人にとってもっと関心のあることは、日本人がどこからきたのか、日本人と韓国・朝鮮人はどの程度遺伝子的に共通しているのかということだと思う。もし日本人と韓国人は遺伝子的に区別が付かない、みたいに分かったら、韓国人に偏見を持つ日本人は(特に、男女の性役割分担を生物学的に擁護する人とか)どう思うのかな。
 ちなみに、先日会ったコリアンの友人に聞いてみたところ、「コリアンから日本人が枝分かれしたのであれば良い、その逆はイヤ」と言っていた。ま、それは彼女が「日本嫌いのコリアン」というキャラとして言っているんだけど、どっちが幹でどっちが枝かなんて区別つけようがないような気がするなぁ。